TransTech Conference2019に登壇した投資家がイチオシの製品やベンチャー企業について語っている。まったく宣伝していないのに1000万人以上のユーザーがいる瞑想アプリや、脳とコンピューターを直接つなぐヒューマン・マシン・インターフェースの話が飛び出した。彼らの話を聞いていると、日本に比べると、米国のほうがヘルスケア、特にメンタルヘルスのケアに気を使っている人が多いような印象を受けた。
またカンファレンスに参加した人たちの話を聞いていると、TransTechという言葉の定義が人によって微妙に違うように感じる。カンファレンスの主催者はTransTechを「人類を進歩させる技術」と定義し、特にブレインテックやヘルステックなど広範囲の技術のことを指しているようだ。一方で、インドの民族衣装を身に纏ったり、ヒッピーっぽいファッションで参加している人たちは、TransTechを「悟りに向かうための技術」として定義しているようだった。おもしろかったのは、ヒッピーのようないでたちをしていても博士号を持っている人が多かったということ。人は見かけによらないw。
しかし参加者の大多数は、主催者が提唱する広義の定義とヒッピー系の狭義の定義の真ん中に位置し、瞑想に関する技術やメンタルヘルスに関する技術というような定義でTransTechという言葉を使っているようだった。
さて4人の投資家が選んだイチオシTransTech製品、企業は次の通り。
ベンチャーキャピタルBridge Builders Collaborative社のCharlie Hartwell氏イチオシの瞑想アプリ。瞑想ガイダンスや、瞑想音楽のプラットフォームになっており、全世界127カ国に計1200万人ユーザーがいるという。同氏によると、まったく広告、宣伝なしに、これだけのユーザーを集めているという。各種瞑想アプリのユーザーに対するアンケート調査でも、Insight Timerを使っている人のほうが、ほかの瞑想アプリを使っている人よりも長く瞑想を楽しんでいるという結果が出ているという。Insight TimerのCEOのChristopher Plowman氏は「正直、私たちもなぜだか分からないんです。でも何かがあるんだと思います」としている。
このプラットフォーム上には5500人以上の瞑想のインストラクターやミュージシャンが登録しており、彼らが作った瞑想音声ガイダンスや瞑想音楽が3万2000曲登録されている。幅広い選択肢の中から、自分に合ったものを見つけ出せるのが、人気の秘密なんだろうか。
「日本」というキーワードで検索すると、日本人インストラクターの作った瞑想ガイダンスがいくつか表示された。
最初は無料登録して無料で使えるコンテンツを使ってみて、このアプリが気に入れば年間6800円を寄付として支払う形。収益の50%はインストラクターに支払われるという。
▼Oura
CTR Capital社のGordy Bal氏のイチオシは、スマートリングのOura。いわゆる活動量計なんだけど、主に睡眠の質を高めるたもの工夫がされているもよう。取得できるデータはApple Watchに近いのかもしれないけど、電池が長持ちなので睡眠時間中も睡眠の質を計測してくれるらしい。値段は3万円越え。Apple Watchと同様のことができるのに少し高い気はするが、YouTubeを見たらOuraを絶賛するレビュー動画を幾つか見つけた。やはり専用機器だけにセンサーとしての精度が高いみたい。アスリートや健康に関心のある人には大変好評のようだ。
Bal氏によるとOuraのCEOは、ニューヨークのヘッジファンドで大成功したが睡眠不足が原因で幸福ではなかった。よりよい睡眠を求めて開発したのがOuraで「Ouraの経営陣の本気度がすごい」と絶賛している。
Kingcedar Holdings & Affiliate社のJohn H. Cammack氏は、近赤外線ヘッドギアのVielightを推薦している。近赤外線を脳に照射することで、脳内細胞のミトコンドリアが活性化するという仕組み。「アルツハイマーや痴呆にも大きな効果がありそうだし、CEOは起業家としても大変すばらしい人物だ」と絶賛する。
実は僕も、シリコンバレーに出張した際にこのヘッドギアを試着したことがある。もちろん痛くもかゆくもなく、20分ほどするとかなり深い瞑想状態に入った。瞑想が苦手な人にも効果があるかもしれない。
Joyance PartnersのJun Deng氏は、「多数のベンチャーに投資しているが、1社選ばなければならないのだとすれば、Paradromix社だ」と言う。paradromix社は脳とコンピューターをつなぐブレイン・コンピューター・インターフェイスのベンチャー企業で、米軍の研究機関からの支援も受けている。同社が開発したICチップは、脳内に埋め込むことで脳内の電気信号を記録すると同時に電気で刺激を脳に与えることできるという。
脳とコンピューターをつなぐ研究は長年行われてきたが、最大の問題は大量のデータの伝送方法だと言われる。コンピューターは高速計算が得意だが、1度に1つの計算(逐次処理)しかできない。一方で、脳は計算速度は遅いが、大量の計算を同時に並列に処理できる。同社のチップは、脳の並列処理のデータをコンピューターの逐次処理に変え、コンピューターの逐次処理のデータを並列処理のデータに変換できるのだという。「脳のブロードバンドモデムのようなチップ」らしい。
Deng氏は「臨床試験で同社のICチップの安全性が確認されれば、精神疾患に苦しむ多くの人への救いとなるだろうし、体が不自由な人は機械の腕や足を自由に動かせるようになるだろう」と語っている。
最初の応用例として、脳内に埋め込んだチップとスマートフォンを接続する製品を開発中らしい。頭の中で考えていることが、スマホを通じて音声やテキストに変換される製品になるという。脳の損傷などで発声能力を失った患者にとっては、すばらしいツールとなりそうだ。
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