自動生成AIの宴の後

AI新聞

 

OpenAIのChatGPTやStable Diffusionなど、ビジネスパーソンの間で対話型AIや画像生成AIが大きな話題になっている。ChatGPTは、過去のどのネットサービスよりも短期間にユーザー数が1億人に達したという。ChatGPTを取り込んだ各種サービスが次々と登場し、ブームは加熱気味だとも言える。短期間に加熱したブームは必ず急速に冷めるもの。ブームが冷めたあとの自動生成AIの市場がどうなるのかを考えてみた。

 

ハイプサイクルという概念がある。米調査会社ガートナーが提唱した概念で、過度に期待される技術は、期待のピーク期から一気に下降して幻滅期に入り、その後再びゆっくりと上昇し安定的に生産性を伸ばしていく、という考え方だ。


https://www.gartner.co.jp/ja/research/methodologies/gartner-hype-cycle

 

ブームになると、新しい技術でなにもかもが可能になるように感じるが、そんなわけはなく、最後には期待外れで多くの人はその技術に対する興味さえもなくしてしまう。最近の例ではメタバースが幻滅期に入ったようだ(日経XTREND記事:メタバース、Web3は「予定通りの幻滅期」)。自動生成AIも、この急速な盛り上がりからすると、幻滅期も近いのではないかと思う。

 

既に多くの企業がChatGPTを導入したサービスを提供し始めているようで、ChatGPTというキーワードで企業の発表文を検索すると、実にいろいろなサービスが既に登場しているようだ。(参考 PRTimes 「ChatGPT」検索結果ページ

 

おもしろそうなところでは、Webページの見出しや本文をChatGPTに書いてもらうサービスや、越境ECの多言語対応にChatGPTを使うサービス、店舗に対する口コミに自動的に返信するサービスなど、いろいろ始まっている。

 

こうしたサービスのうち幾つかは成功するだろうが、大半のサービスはChatGPTのブームの終焉とともに使われなくなるか、競合他社が同様のサービスを出してきて、それほど儲からなくなるのだと思う。

 

ChatGPTを開発したオープンAIのSam Altman氏によると、今後大成功するのは、基盤となるAIのモデルを微調整しただけのサービスではなく、基盤モデルの部品を利用しながらも、特定の国や分野に改良した特化型モデルを構築した企業になるという。

 

確かに今出てきているサービスは、ChatGPTを微調整しただけのものがほとんど。例えて言えば、掃除機の吸い口だけを取っ替えただけのようなサービスが多い。

 

Altman氏が言うのは、掃除機を分解して、モーターなどの基幹部品を取り出し、その基幹部品に新たな部品を加えて、まったく別の掃除機を作るものだ。

 

 

その新しい掃除機にも、いろいろな吸い口が追加されて、いろいろなサービスに利用されるようになる。

 

 

Altman氏は、そうした改良版モデルを作り出した企業は「長い間、価値を社会に提供し続け、Google並みの大企業になる」と語っている

 

どういった領域にそうした改良版モデルが登場するようになるのだろうか。米スタンフォード大学基盤モデル研究所によると、まずは人件費の高い医療や法律、教育の分野にそうした特化型モデルが登場することになるだろうとしている。

 

そうした改良版モデルは、すぐに作れるわけではない。パイプサイクルが今後幻滅期に入る中で、そうした改良版モデルが開発され、ゆっくりと社会に浸透していくのかもしれない。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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