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会社は家族ではなく球団、Netflix究極の企業文化=「No Rules」レビュー④

  • 2020.9.30

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「会社は家族ではなく、プロのスポーツ球団のようなもの」。米Netflixの企業文化を理解するには、この一文が最適かもしれない。スーパースターを最高値で雇用し、中庸な能力のメンバーをトレードに出す。これが同社の最も斬新、かつ一方では議論を呼ぶ企業文化かもしれない。

 

伝統的な会社は、社員を家族として扱ってきた。家族なので、簡単には縁を切られることはない。それゆえに安心して自分の最高のパフォーマンスを上げることができるというメリットがあった。

 

しかし社会や経済の変化は加速度も増してきた。家族のメンバーが、時代変化に適応できるようになるまで待つ余裕はなくなった。

 

NetflixのCEO、Reed Hastings氏によると、同社は球団のようなチームだという。プロの球団が、シーズンごとにトレードを通じて選手を入れ替えるように、社員も流動的であるべきだという考え方だ。

 

同社では社内の職種を「クリエイティブ職」と「一般職」に分け、クリエイティブ職の人材にはそのときどきの市場価値の最高額の給料を支払う。ヘッドハンターから声がかかれば、給与の提示額を聞いて上司に報告することが推奨されているという。クリエイティブ職では、スーパースターの社員は中庸な能力の社員の何倍ものパフォーマンスを上げることができる。なので市場の最高値の給料を支払うのだという。

 

一方でパフォーマンスが下がったり、ビジネス環境の変化で不要になったメンバーはトレードに出す。管理職は、自分の部下が辞めれば困るかどうかを常に意識して、辞めても困らないような社員には、すぐにでも高額の退職金を支払って辞めてもらうようにしているのだという。

 

そうすることで社内は超優秀な人材の集合体になる。超優秀な人材は互いにいい影響を与え合い、会社全体のパフォーマンスが大幅に向上するのだという。

 

超優秀なチームで仕事を楽しみスキルを向上させたい人だけが、Netflixに来ればいい。同社が支払うような高給を求めなければ、長期的に勤務できる会社はいくらでもある。安定志向の人はそうした会社に勤めればいい。それがHastings氏の考え方だ。

 

問題は、辞めてもらう社員にどう対処するかだ。同社では辞めてもらう社員には最高9ヶ月間の給料を支払う。もともと優秀な人材だし「次の仕事を見つけるのに、十分な期間のはずだ」と言う。

 

感情的な問題はどうなのだろう。Hastings氏は「オリンピックの代表に選ばれなかった選手はがっかりすることだろう。しかし代表の選考にまで残ったということは名誉なこと。Netflixを辞めていく人たちにも同様に感じてもらいたい」と言う。業界の最優秀人材だけを集めた会社に在籍した。それだけで名誉なこと。そう思えるような会社にしたいということなんだろう。

 

とはいえ、いつクビになるかもしれないという恐怖はないのだろうか。インターネットで検索すると「Netflix Culture of Fear(恐怖の文化)」というようなタイトルの記事が幾つか見つかる。

 

共著者のErin Meyer教授が社員にインタビューした結果でも、いつクビになるかもしれないという恐怖を持っている社員が一定数いることが分かったという。

 

会社は家族で、社長は親として子供である社員を守るべきなのか。それとも会社は、精神的に独立した大人が集まったチームなのか。

 

Netflixのやり方が今後主流になるのかどうかはわからない。ただ少なくとも、Netflixが新しい価値観をビジネスの世界に提示していることだけは、間違いなさそうだ。

 

 

 

 

10月22日の日本語版発売予定に先駆けた英語版の先行レビューのシリーズ。

 

日本語版の発売に合わせてオンライン勉強会を開催する予定です。詳細は後日発表します。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。