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精鋭集団でゾーンに入る。Netflixの究極の企業文化=「No Rules」レビュー②

  • 2020.9.16

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企業経営は、山あり谷あり。今では飛ぶ鳥を落とす勢いのNetflixにも苦しい時期はあった。従業員の1/3をレイオフしなければならない事態に陥ったのだ。ところがこのレイオフは、経営者のReed Hastings氏をも驚かす結果になった。レイオフを終え、Netflixの組織は数段パワーアップしていたのだった。

 

2001年、過度の期待を集めたインターネットバブルが弾けた。Netflixは当時、映画のDVDを郵送で配達するビジネスモデルで、典型的なネット企業ではなかったのだが、赤字続きのNetflixに出資してくれる投資家は一人もいなくなり、急きょ経営難に陥ったのだった。

 

120人の従業員のうち40人には、辞めてもらうしかない。Hastings氏は苦しんだ。

 

創業間もないころから苦楽を共にしてきた仲間を、切り捨てなければならない。クビになる本人には当然つらい話だし、居残った人たちも仲間がクビになって嫌な気持ちになることは間違いない。チームワークは、ずたずたに切り裂かれるのではないか。同氏はそう考えると暗澹たる気持ちになったという。

 

ところが2002年にDVDプレーヤーが人気のクリスマスプレゼントとなり、その影響でNetflixのDVD郵送サービスの売り上げも上がり始めた。これまで以上の量の業務を、これまでの2/3の従業員でこなさなければならない。

 

しかし残った80人の従業員は嬉々として働いた。仕事をするのが非常に楽しい様子で、ある従業員はその心情を「まるで恋している感じ」と形容した。

 

レイオフのおかげでNetflixは少数精鋭の組織となり、無駄のない組織で、力を出し切っていた。スポーツ選手がよく口にする「ゾーンに入った」状態になったわけだ。

 

これが成功する企業運営のコツ。Hastings氏はこのとき、このことに気づいたという。

 

超優秀な人材にとって、企業の魅力はきれいなオフィスでも、無料のランチでもない。自分と同じように超優秀で、協力的な仲間と一緒に仕事をすること。それ自体が、その企業の魅力であるべきだ。

 

超優秀な人材同士が刺激し合い、協力し合えば、会社全体の能力は一人一人の能力の和ではなく、指数関数的に向上する。

 

反対に中庸な能力の人材や、愚痴を言う人、性格が悪い人が、たった一人でもいれば、会社全体の能力は劇的に低下する。

 

それ以降、同社はトップレベルの人材を高給で雇用すると同時に、働いてもらったものの能力が中庸であったり、性格に問題があることが分かった人には、高額の退職金を支払って自主退社してもらうことにしているという。

 

Netflixの企業文化の1つ目のポイントは、超優秀な人材だけで組織を形成する、ということだ。これがすべての基本だという。

 

そして超優秀な人材だけの組織のパワーを最大化させるために、互いに批判的なアドバイスを口にできる企業文化を作る。これが2つ目のポイントになる。

 

相手が上司であっても社長であっても、相手のためになるアドバイスであれば、公の場であってもその場でそれを口にできる文化。Netflixは、その文化を維持するために、いろいろ工夫しているのだという。

 

大事なのは、アドバイスを言うことが、自分のためではなく、相手のためになっているのかどうか。自分の不満をぶつけたい、というのは自分のための動機だ。そうした動機が少しでも含まれるアドバイスは認められないという。

 

優秀な人でも、人格的に未熟で、こうしたアドバイスがうまくできない人がいる。たとえその人がどれだけ優秀であったとしても、そうした人には会社を辞めてもらうようにしているという。

 

超優秀な人材が、超優秀な人材からアドバイスを受け、互いに切磋琢磨して能力を伸ばしていく。その結果、企業全体の能力が劇的に伸びていくのだという。

 

コロナ禍の中、会社を急いでデジタル化しなければならない。その思いからデジタルトランスメーション(DX)を進める日本企業が増えているが、大事なのはデジタル化ではなく企業文化。社会貢献し業績を上げるには、企業文化をこれからの時代に合わせなければならない。デジタル化はそのためのツールにしか過ぎない。

 

Netflixの企業文化は、一人一人が自主的に動き、そうした人たちが組織化することで、一人一人の能力をはるかに超えた力を発揮する形になっている。少し前に流行った「ティール組織」という組織形態に通じるものがあるのかもしれない。

 

日本のビジネス風土や商習慣とは異なるのでNetflixのやり方をそのまま取り入れるのは難しいかもしれないが、目指すべき企業文化の最終形態として参考にできるところは多いかもしれない。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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