2024年AI業界2大トレンドは、チャットボットと基盤モデルの進化

AI新聞

2023年はAI業界にとって波乱の一年だった。2022年11月30日にリリースされたChatGPTがあっという間に普及し、世界中で生成AIブームを引き起こした。では2024年はAI業界にとってどんな年になるのだろうか。

 

AIの進化は加速度を増しているので何が起こるのか正確に予測するのは難しいが、この2、3カ月のAI業界の動きを見る限り、少なくとも来年は2つの大きなトレンドが産業界に大きな影響を与えることになりそうだ。

 

1つはチャットボットの普及だ。

 

キャラクター型チャットAIという新メディア」や「開発するなら今 AIツール戦国時代とその勢力図」という記事などで何度か取り上げたが、アクセス数でChatGPTに迫る勢いのAIサービスであるcharacter.aiのようなキャラクター型のチャットボットが来年は日本でもブームになると思う。character.aiは、有名人やアニメの主人公のようなキャラクターのチャットボットをだれでも簡単に作ることのできるサービスで、英語圏の10代から20代の若者が熱狂しているサービスだ。

 

来年は、これと同じようなプラットフォームをMetaがInstagramやFacebookで展開すると発表している。Instagramは日本でも若者に人気のSNSだけに、日本の若者の間でもキャラクター型チャットボットがブームになる可能性が高いと思われる。

 

一方、OpenAIも、技術者でなくても簡単にチャットボットを開発できるツールを発表してきた。もう既に世界中のクリエーターたちが数多くのチャットボットを開発し始めているようだが、OpenAIは来年にはこうしたチャットボットのアプリストアのようなものを開設する計画を明らかにしている。OpenAIは、人気のチャットボットを開発したクリエーターとChatGPT有料版の収益をシェアする意向を表明してしている。YouTubeが広告費の収益を動画クリエーターとシェアすることで、多くのクリエーターが動画作成事業に参入し、中にはそれだけで生計を立てることが可能になったクリエーターもいる。同じことがチャットボットの世界でも起こるかもしれない。

 

エンタメ系のチャットボットではInstagram、ビジネス系のチャットボットではOpenAIのプラットフォームが要注目トレンドだと言えるだろう。

 

もう1つのトレンドは、基盤モデルのさらなる進化と競争の激化だ。

 

Googleはこのほど新しい基盤モデルGeminiを発表した。これまで業界最先端を独走していたOpenAIの基盤モデルGPT-4を、わずかながら超える性能をほとんどのベンチマークで叩き出したという。

 

OpenAIは果たして次期基盤モデルですぐに抜き返すことができるのだろうか。「GPTストア開設を延期=トップ解任騒動でOpenAIが減速」という記事に書いたように、OpenAIはトップの解任騒動で開発プロジェクトが減速するだろうから、すぐに巻き返すことが難しいかもしれない。

 

一方有力AIベンチャーInflection.aiが開発した175B(1750億パラメーター)の基盤モデル「Inflection-2」は、わずかながら性能ではGPT-4に及ばないが、同社によると半年後にはその10倍、1年後には100倍の規模の基盤モデルを開発し、開発競争の最前列に躍り出る計画という。

 

OpenAI独走の2023年とは打って変わって、2024年はトップ集団の開発競争が激化しそうだ。

 

OpenAIのSam Altman氏は「来年、AIは誰も予想しなかったレベルにまで大きくジャンプして進化する」と語っているが、こうした巨大基盤モデルの性能はどのようなものになるのだろうか。

 

2024年のAI業界は、2023年以上に波乱の年になりそうだ。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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