AIとサイバーセキュリティのパワーバランスが、歴史的な転換点を迎えた。米紙Wall Street Journalに夜と、Anthropicの最新AIモデル「Mythos(プレビュー版)」を活用した研究チームが、強固なセキュリティで知られるAppleの最新チップ「M5」を搭載したmacOSの未知の脆弱性を発見し、システムを掌握する攻撃ルートをわずか数日で構築した。
Appleが約5年の歳月を投じて開発した最新の防御システム「MIE(メモリ整合性強制機能)」は、AIと人間の専門家によるタッグの前に防壁としての機能を失った。Mythosは複数の小さなバグを瞬時に特定し、それらを論理的に繋ぎ合わせる複雑な「チェーン攻撃」を自律的に構築するという、かつてない離れ業をやってのけた。
さらに警戒すべきは、これがAnthropic単独の特異な事例ではないという点だ。競合であるOpenAIの最新モデル「GPT-5.5」も、最高難易度のサイバータスク評価においてMythosと同等以上の驚異的なハッキング能力を示している。トップクラスのフロンティアAIが、人間のエンジニアが長年見逃してきたシステムの穴を次々と暴き出しているのが現在のリアルだ。
未知の脆弱性がAIによって大量かつ高速に発見され、ベンダー側の修正パッチが全く追いつかなくなる——専門家が恐れる「バグマゲドン(Bugmageddon)」の足音は、すでにすぐそこまで迫っている。我々は今、AIがサイバー空間のインフラを根本から揺るがす、全く新しい次元の防衛戦へと足を踏み入れたのかもしれない。

湯川鶴章
AI新聞編集長
AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。