AIエージェント展開で爆発するプロフェッショナルサービス需要

AI新聞

OpenAI Deployment Company発足が呼んだ大議論

 

OpenAIが「OpenAI Deployment Company」を発表したことを契機に、X上ではAIエージェントの企業導入を支える「プロフェッショナルサービス」と「FDE(Field Deployment Engineer:現場展開エンジニア)」の重要性をめぐる議論が一気に盛り上がっている。OpenAIの新会社は同社が過半数を保有し、19の投資会社・コンサルティングファーム・システムインテグレーターを束ねて、フロンティアAIの本番運用を企業向けに支援するという布陣だ。

 

この発表を受けて、Boxの共同創業者兼CEOアーロン・レビー氏(@levie)が投じた一連の投稿が大きな反響を呼んでおり、わずか半日で約16万ビュー、900近いいいねを集めている。

 

「過去のどの波より大きい」とBox CEO

 

レビー氏はまず、AIエージェント導入を支援するプロフェッショナルサービスとFDEの需要は「今まさに巨大」だと指摘した。これまでもテクノロジーの波が来るたびにコンサルティングと技術サービスの新時代が生まれてきた歴史を踏まえつつ、レビー氏は、1990年代のアナログからデジタルへの移行、2000年代のオンプレミスからクラウドへの移行を引き合いに出した上で、今回のエージェント化の波は「過去のどの波よりも遥かに大きなスケールになる」と断言している。

 

その理由として彼が挙げるのは、エージェントが「組織の根底にあるワークフローそのものを書き換える」点だ。これまでの技術更新は、提供される手段(オンプレCRMからクラウドCRMへ)が変わる程度のことだった。しかし今回は、業務プロセス自体が再構築される。しかも業務プロセスは企業ごと、部門ごと、業種ごとに固有の癖や事情を抱えており、CPG業界のマーケティングとヘルスケアのマーケティング、B2BソフトウェアのセールスとカーディーラーのセールスではAIエージェントの実装は全く違うものになる、と説明する。

 

技術的にも組織的にも難しい仕事

 

さらにレビー氏は、エージェント導入は技術的にも決して容易ではないと強調する。具体的に挙げているのは、インフラとデータの近代化、エージェントと人間双方に対応したアクセス権限・エンタイトルメント・パーミッションの再設計、エージェントへの適切なコンテキスト提供、モデル更新時の継続的な評価とメンテナンス、そしてどの工程を人間が担い、どこをエージェントに任せるかというチェンジマネジメントだ。

 

「これは技術的にもドメイン特化のプロセス面でも、途方もない量の仕事だ。新しいサービスプロバイダーにとって、そして社内に立ち上がる新しいチームや職種にとって、大きなチャンスになる」とレビー氏は締めくくっている。

 

マーケティング業界の組織図はこう変わる

 

このスレッドに呼応する形で、マーケティングテックの起業家ericosiu氏(@ericosiu)が、より具体的な組織変革像を提示し議論を加速させた。同氏によれば、従来の「機能と専門性」に沿った組織図は、不要な引き継ぎとコミュニケーションの階層を生み、純粋な労働力アービトラージという質の低いビジネスモデルしか作れなかった。新しい組織図は「アウトカム(成果)とループ(継続的循環)」を軸に編成されるという。

 

ericosiu氏が描く対応関係は鮮やかだ。アカウントマネージャーは「アウトカムオーナー」に、チャネルスペシャリストは「ループオーナー」に、ライターやプロデューサーは「クリエイティブ・システムズ・オペレーター」に、アナリストは「インサイトループオーナー」に、ストラテジストは「グロースアーキテクト」に、そしてプロジェクトマネージャーは「ワークフロー&エージェントオプスマネージャー」に置き換わる。

 

価値を高める人材像として彼が挙げるのは、センス、戦略、システム思考、クライアントとの信頼関係、そしてAIネイティブな実行力を兼ね備えた人物だ。逆に「タスクを順番通りにこなすだけの人」は真っ先に淘汰されるとし、そうした働き方はもう通用しないと警告している。

 

この議論が示しているのは、生成AIの本命がモデル単体ではなく「導入と運用」のレイヤーに移行しつつあるという現実だ。OpenAI自らがコンサル機能を内製化する動きに出たことは象徴的で、SIerやコンサルティングファーム、そして新興のAIブティックにとっては、90年代のIT黎明期や2000年代のクラウド移行期に匹敵する商機が訪れている。日本企業にとっても、業務プロセスの棚卸しと権限設計、評価基盤の整備を担う「エージェントオプス」人材の確保が、当面の最大の経営課題になりそうだ。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

  • Home
  • AI新聞
  • AIエージェント展開で爆発するプロフェッショナルサービス需要

この機能は有料会員限定です。
ご契約見直しについては事務局にお問い合わせください。

関連記事

記事一覧を見る