スマートフォンやスマートウォッチなどの電子機器が医療関連の行為に利用されることが増えてきている。なのでスマホが重要な医療機器の1つになるのだろうとは思っていたけれど、米医学界の権威Eric Topol医師は「スマホが医療の中心になる」と断言する。同医師によると、スマホに搭載されたAIが一人一人のバーチャル医療コーチになって、24時間、人間に寄り添って健康的な生活を送るためのアドバイスをしてくれるようになると言う。
バーチャル医療コーチのようなAI が普及することで、将来は薬が不要になる、という未来予測は以前、耳にしたことがある。医学界の権威が同様の発言をするのだから、やはり未来はその方向にあるのかもしれない。正確にはTopol医師は薬がなくなるとは言っておらず「薬が少なくなる未来を期待している」という表現なんだけど。
Topol医師がどれくらいすごいかと言うと、医学論文の引用数のトップ10に入る研究者でありながら、「ディープメディスン」「医療の創造的破壊」などの全米ベストセラーを何冊も書いている。まさに米医学界のオピニオンリーダー的存在と言える。
そのオピニオンリーダーが考えるバーチャル医療コーチとはどういうものなのだろう。
同医師によると、スマホに搭載されたAIであるバーチャル医療コーチは、ユーザーの遺伝子情報を始め、腸内細菌の遺伝子情報や、スマートウォッチなどのウエアラブル機器で常に取得できる生体データ、それにユーザーに関係しそうな医療論文などをベースに、ユーザーの健康状態を常に把握。食事や睡眠、運動などに関するアドバイスを頻繁に提供する存在になるという。
現状でもスマホやスマートウォッチで心拍数や心拍変動、心電、活動量、睡眠の質などを計測可能。血圧や血中酸素濃度、血糖値なども計測できるようになりつつある。
また一見、健康状態と無関係に見えるデータでも、AIが健康状態との関連性を見つけ出し、ユーザーの健康状態を示すデータになりうることがある。例えば、ユーザーのスマホ入力のパターンとユーザーの精神状態に関連性があることがAIによる解析から明らかになっている。心配事があるとタイピングがわずかながら遅延するのかもしれない。そうしたわずかな変化は人間では気づかないけれど、AIは敏感に察知。そのユーザーのそのときの心理状態を、正確に推測できるのだという。【関連記事 AI使えばスマホの操作から精神状態が分かる。バーチャルクリニックで患者を常時モニター】
このように一見無関係のデータでも今後はAIが健康状態と関連づけることができるようになる中で、スマホやスマートウォッチの医療機器としての役割がますます重要視されるようになるのだろう。
とはいえ、バーチャル医療コーチの普及で医師が不要になるというわけではない。「どこまで行ってもAIは人間のような思いやりを持てるようにはならない」と同医師は言う。常時取得可能なデータを常に監視し、分析するのはAIの得意領域。そこはAIに任せて、人間の医師は思いやりを持って患者に寄り添い、患者の生死にかかわるような病気に関する判断を行うようになるという。つまり「人間の医師とAIは相乗効果を持つ補完関係になる」と予測する。
<Eric Topol医師>
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