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AI使えばスマホの操作から精神状態が分かる。バーチャルクリニックで患者を常時モニター

  • 2020.1.16

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AIのすごさの一つは、人間には気づかないデータ間の関係性にAIなら気づくというところ。例えばイライラしていたり疲れているときって、スマートフォン操作の指使いに、早くなったり遅くなったりなどの違いが出るものだろうか。米Mindstrong Health社の最高科学責任者のPaul Dagum氏が行った実験によると、スマホ操作と精神状態には明らかな相関関係があることが分かった。指使いデータを解析することで、ユーザーのストレス具合をいち早く認識できるという。多くの人が常に持ち歩く電子機器だけに、スマホが現代人のメンタルヘルスに大きく貢献する可能性が出てきた。

 

▼スワイプ、タップのわずかな時間差で、認知能力の低下を察知

Dagum氏が行った実験には、18歳から34歳までの被験者27人が協力。実験用に開発されたアプリを各人のスマホにダウンロードしてもらった。

このアプリは、別のアプリを使っているときでも、被験者のスワイプ、タップ、キーストローク、ピンチイン、ピンチアウトなどの指の動作データをすべて収集。「スワイプの次にタップ」「タップの次にキータッチ」など、連続する2つの指の動作を1つの組み合わせパターンとし、一日に数百回繰り返されるパターンの中から、最も頻繁に繰り返されるパターンを45個選び出した。その上で、一日のうちのどの時間帯に、どのパターンが多いのか、連続する2つの動作の間の時間差がどのように変化したのかを解析した。

また神経心理学の分野で広く実施されている複数の心理テストを27人の被験者全員に受けてもらい、作動記憶、記憶、実行機能、言語、知性などに関する各人の精神状態を計測した。

スマホの指の動作のデータと、心理テストの結果データ。両方のデータをAIに学習させて相関関係を見つけ出し、指のデータから精神状態を予測するモデルを構築した。実際には、Aさん以外の26人のデータを学習させた予測モデルに、Aさんの指の動作データを入力して、Aさんの心理テストの結果を予測させ、Bさん以外の26人のデータで作った予測モデルでBさんの心理テストの結果を予測させた。その結果が下のグラフ。赤が予測値で、青が実際のテストの結果。かなりの精度で予測できていることが分かる。

 

▼患者の日常生活のデータを、精神科医がリアルタイムにモニター

Mindstrong社の最高臨床責任者のGabe Aranovich氏によると、この実験の特筆すべき点は、日常生活の中でデータが取得できているところ。自宅で血圧を測るより病院で血圧を測るほうが緊張してるので血圧の数値が高くなる、と言われる。同様に、実験室で計測したデータには多少の誤差が含まれる可能性がある。ところが今回の実験では、スマホという普段から持ち歩いている電子機器で、普段の生活の中で自動的に収集されたデータなので、信頼性が格段に高くなるわけだ。

スマホのもう一つの利点は、コミュニケーションデバイスでもあるということ。離れた場所にいる精神科医やカウンセラーが、患者の精神状態をリアルタイムにモニターでき、迅速に対応できるメリットがある。

そこでMindstrong社では、バーチャルクリニックを開業。同クリニック用に開発されたアプリで、スマホ操作を解析し、患者がその結果をモニターできるようにした。患者は自分の精神状況を正確に把握できるだけでなく、いつ、どんな出来事がストレスの原因になっているのかも分かるようになるという。

また精神科医、セラピストにもデータの解析結果が送信される仕組みになっている。Aranovich氏は自身が精神科医だが、「これは神からの贈り物のようなツール」だと言う。「週に一度の診療時間には、患者がどういう精神状態なのかは分かる。でもそれ以外の時間に患者がどのような精神状態なのか、これまでは知るすべはまったくなかった」と言う。このアプリのおかげで、患者の精神状態の推移を把握できるし、万が一の場合も対応できるという。「自分の患者が緊急搬送されたという連絡が緊急病棟からあって初めて、血液が正常に循環できなくなるほど患者の精神的な症状が悪化していたことが分かる。精神科医ならだれもがそんな悔しい経験を何度もしているはず」と語っている。

Mindstrong社のバーチャルフリニックは米国の数カ所の地域で運営が始まっており、精神分裂症などの患者のスマホ操作データを通じて24時間モニターできる体制を取っているという。その結果、緊急病棟に搬送される件数が明らかに減っているという。こうした実績データは、2020年中に発表される予定だという。

 

▼心が治れば体も治る

Aranovich氏によると、心と体は深く関連しており、下のグラフにあるように精神疾患の患者はそうでない人より、身体的な病気にかかる割合が高いことが分かっている。また精神疾患を治療すれば、身体的な病気も治るという統計もあるという。「将来的には、精神疾患だけではなく、身体的疾患もスマホの操作データから予測できるようになると思う」と同氏は語っている。

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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