「2年間で中国AI産業は激変した」中国専門記者Nina Xiang氏

AI新聞

 

 

【質問】今日の中国AI産業を正しく形容している文章は次のうち、どれでしょう?

 

・中国のAI技術は、米国を凌駕するほど伸びてきている

・中国はデータプライバシーに無頓着なので、AI技術が進化した

・中国のAIベンチャーが次々と巨大化している

 

 

【答え】 元ブルームバーグ記者で中国経済専門のジャーナリストNina Xiang氏によると、上記の文章は3つとも間違いだと言う。

 

「中国のAI産業は、米国に追いつき追い越そうとしている」。少し前まで、 こういった論調の記事が多かった。ところがXiang氏は著書Red AIの中で、「中国AI産業は大きいが、強くない」と書いている。

 

 

どういう意味なんだろうか。zoom通話を通じて同氏に直接聞いてみた。

 

同氏によると、Google傘下の英AIベンチャーDeepMind社のAI「Alpha Go」が、韓国の碁の名人、リ・セドルに圧勝して以来、多くの中国AIベンチャーがAlphaGoの技術を徹底的に解明し、その技術を応用した製品を次々と生み出していったという。

 

なのでAlphaGoのAI技術を応用した製品の国別市場規模は、中国が圧倒的に大きい。「しかし基礎技術はDeepMind社が開発したもので、中国人技術者がそれに大きく貢献したわけではない」と同氏は指摘する。

 

また同氏によると、中国のロボット産業は多くのAIベンチャーが大きく業績を伸ばしているが、その技術は米国のロボットベンチャーの雄、Boston Dynamics社の基礎技術を解析、応用したものだと言う。

 

つまり中国のAI産業は応用技術で優れた結果を出し、市場規模も非常に大きくなっているが、基礎研究の力は弱いわけだ。これが同氏の言う「中国AIは大きいが、強くない」という意味だという。

 

また同氏は、中国がデータプライバシーには無頓着という表現も間違っていると指摘する。確かに2、3年前までは中国のAI産業は個人情報に無頓着なところがあった。ありとあらゆる場面で、顔写真が撮影され、AIによる本人認証に使われた。プライバシーに考慮する必要がないので中国の間認証技術は世界のトップレベルになった、という論評もあながち間違いではない。同氏によると、2、3年前までは個人情報保護に関する法律や裁判所の判例もなく「中国のAI産業は、まるで西部劇に出てくるような無法地帯のようだった」と同氏は形容する。AIの性能がよければ、なんでも許されたフェーズだったわけだ。

 

ところがある大学の法学部の教授が顔認証システムを強制する自治体を訴え、勝訴した。それからは、データプライバシーに関する世論が一転。「いわゆる西部の無法時代は終わりました」と言う。

 

このように中国のAI産業に関する西側諸国の報道は、間違い、もしくは少し前の状況をいまだに報じているものが多いという。

 

 

【お知らせ(PR)】

 

 

Nina Xiang氏は、株式会社エクサウィザーズ主催のオンラインカンファレンスExaForum2021(5月18日ー19日)に登壇することが確定しました。中国AI企業の現状や、過去1、2年間で起こった変化、中国AIベンチャーが大企業になれない理由など、他ではなかなか聞けないようなお話をしていただく予定です。

 

ExaForum2021ではXiang氏のほか、米ウォートンスクール教授のMauro Guillen教授、未来学者のSteve Brown氏、米医学界の権威Eric Topol医師などが、米国の著名なスピーカーが多数登壇します。このイベントに参加するだけで、AIによって劇的に変化する世界のビジネスの今と近未来の姿を、簡潔に学んでいただけると思います。

 

またこのイベントはvFAIRSというバーチャルイベントのプラットフォームを採用。オンラインイベントの世界最先端の姿を体験していただけます。

 

 

参加費は無料。申し込みは以下のリンクから。

 

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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