GPTストア開設を延期=トップ解任騒動でOpenAIが減速

AI新聞

【編注】画像はAdobe Fireflyで生成

 

米国からの報道によると、OpenAIのGPTストアの開設が来年にずれこんだもよう。同社が顧客などに送付したメモによると、「予測していなかった事態が原因で忙しくなり、今月中に予定していたGPTストアの開設が来年になった」という。「予測していなかった事態」とはSam Altman氏のCEO解任騒動のことを指しているとみられ、この騒動が同社のスピード経営に大きな影響を与えていることが分かる。

 

同社が既に提供しているサービスなどへの影響はまだないが、同社が計画していた新事業や新サービスへの影響は免れないもよう。テック大手や有力AIベンチャー間の開発競争が続いているが、これまで先頭を走っていたOpenAIが減速することで競合他社が追いつくことになり、2024年には業界勢力図が大きく塗り変わる可能性が出てきた。

 

GPTという言葉は、これまでGPT-3やGPT-4などといった同社の一連の基盤モデルのことを意味する、同社基盤モデルの総称のような意味で使われることが多かった。しかしOpenAIはこのほど開催した開発者向けイベントで、同社提供の簡易開発ツールを使って開発されたチャットボットを「GPT」と定義。基盤モデルの総称としての「GPT」という言葉の使われ方を否定した。

 

チャットボットであるGPTは、OpenAIの開発ツールを使えば素人でも簡単に開発が可能。開発されたGPTはGPTストアに並べられて、人気のGPTにはアクセス数などに応じた金額がOpenAIから支払われることになる計画だった。ちょうどYouTubeが広告収入を動画作成者と分配することで世界中のクリエーターがYouTube上で動画を発表。YouTubeが動画の最大手プラットフォームになり、大金を稼ぐユーチューバーが現れた。これと同じことが起こる可能性があるとして、GPTストア開設に注目が集まっていた。

 

今回報道されたメモによると、GPTストアの開設時期は「来年の早い段階」とあるだけで、具体的な日程は明らかになっていない。

 

GPTストア以外にも、OpenAIはアラブの富豪の資金で半導体製造に乗り出すという話や、ソフトバンクの孫正義氏の資金でAI関連ハードウェアの開発に乗り出すといった話などが、一部で報道されていた。しかしトップ解任騒動はこうしたプロジェクトの進捗にも影響を与えることになりそうだ。

 

一方で、有力AIベンチャーinflection.aiはこのほど、OpenAIの最高峰モデルであるGPT-4に性能で大きく近づいたA)モデルを発表。同時に半年後にはGPT-4の10倍の規模のAIモデルを、1年後には100倍の規模のAIモデルを完成させる計画であることを明らかにしている。

 

これまではOpenAIが独走状態だったが、来年はトップ集団が入り乱れての開発競争になりそうだ。利用者側としても、OpenAI以外の技術への対応が必要となりそうだ。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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