ChatGPTを開発したOpenAIが、自社開発のAIモデルのセキュリティ面などを大手企業向けに強化させた「企業向けプラン(Enterprise Plan)」を発表した。これまでOpenAIは基本的な技術を開発し、それに追加機能を加えて発売するのは、OpenAIの大株主でありパートナー企業であるMicrosoftの役割だった。いわばOpenAIがメーカー、Microsoftは小売店という関係であり、メーカーは直販店を作って小売店の邪魔をしない、というような関係に思われていた。そういう強力なスクラムを組むことで、OpenAIとMicrosoftは宿敵Googleに対抗する。AIの業界勢力図をそう読む意見が主流だった。ところがメーカーであるOpenAIが、小売店のMicrosoftの企業向けプランと同等の商品の直販を始めたわけだ。OpenAIとMicorosoftのスクラム状態にひびが入り始めたのだろうか。
今回の発表だけを見れば、OpenAIが一方的に不義理を働いているように見えるかもしれないが、実はその前にMicrosoft側が不義理とも言える動きに出ている。OpenAIのAIモデルの強力なライバルであるMeta(旧Facebook)のオープンソースのAIモデルの取り扱いを始めたのだ。OpenAIのAIモデルは今のところ技術的に業界の最高峰とみなされているが、Metaのモデルは一定のユーザー数まで無料で利用、改良できるので、セキュリティ面を考慮して独自のAIモデルを持ちたい大企業などがMetaのモデルを利用し改良し始めた。この動きに、Microsoftはすぐさま対応、同社のクラウドサービスAzure上でOpenAIのモデルに加えて、Metaのモデルの提供も始めた。いわば1つのメーカーの製品だけを専門に売っていた小売店が競合するメーカーの製品も取り扱い始めたようなものだ。
当初、MicrosoftとMetaは優先的パートナーシップを結んだと発表したので、OpenAI、Microsoft、Metaの3社連合ができたかのように解釈する人がいた。Googleは窮地に追い込まれたように見えたわけだ。しかし実際にはMetaは、Microsoftに続いて、AmazonにもAIモデルを提供。さらには今回、GoogleにもAIモデルを提供、クラウド大手3社との等距離外交に入ったようだ。
さすがにGoogleがGoogleクラウド上でOpenAIのモデルを提供してはいないが、OpenAI、Microsoft連合対Googleという単純な図式は終わったようだ。AIの急速な進化を受けて、昨日の友が今日の敵にもなりかねない。最終的には頼れるのは自分だけ。最近のテック大手の動きを見ていると、そんな風に思えてきた。
このほかの今週のニュースには次のようなものがあった。
◎GoogleとNvidiaがGoogleクラウドで協業
NvidiaのAI向け半導体は来年末まで品薄状態が続く見通し。どれだけお金を積んでも買えない状態なので、優先的供給を受けたければ人間関係(会社関係)しかない。どういう条件を出したのか分からないが、GoogleはNvidiaとの関係強化に成功したもよう。(ソース PR times)
◎Googleの画像生成AIが透かし技術を搭載
画像生成AIで嘘の写真をいくらでも簡単に作れるようになっている。これに対抗するために作られたのが透かし技術。Google以外にもほとんどのテック大手は、自社の画像生成AIモデルに透かし技術を搭載する意向を明らかにしている。透かし技術は、作成者などの情報を目に見えない形で画像に追加することのできる技術で、責任を持って生成された画像かどうかを判別できるようになる仕組み。本物に見えても、透かしがあるかどうかでフェイクかどうか判別できるわけだ。(ソース CNET Japan)
◎日本でもGoogleの生成AI検索が利用可能に
ChromeなどのブラウザでSearch Labsに登録して、順番待ち。利用開始になると、自然言語で質問したら、自然言語で回答してくれる。またその回答の根拠も示してくれるようになる。一般ユーザーにとってはChatGPTよりも、使い慣れたGoogle検索でのチャット機能のほうが使い勝手がいいかもしれないので、今後のシェア争いの行方が気になる。(ソース PC Watch)