AmazonがAIセールスアシスタント 顧客向け言語AIの開発競争の幕開け

AI新聞
【編注:画像はAdobe Fireflyで生成】
 
米Amazonは、生成AIを搭載したセールスアシスタント「Rufus(ルーファス)」を米国の一部顧客のモバイルアプリ上でリリースし始めた、と発表した。今後数週間以内に全米で段階的にリリースしていくという。いずれ日本でも展開することは間違いなさそう。
 
製品の詳しい仕様や、類似品との比較、ほかの買い物客の間での評判など、買い物客の質問に何でも答えてくれるAIだという。人気ECサイトとして多くのユーザーに広く利用されているAmazonが搭載することで、このAIの接客レベルがこれからのECやコールセンターのベンチマークとなる可能性ある。このレベルに達していないチャットボットを搭載しているウェブサイトは時代遅れとみなされることになりそうだ。
 
ChatGPTなどの言語AIは、これまで社員の生産性向上のためのツールと見られていたが、顧客向けサービスツールとしてのフェーズに突入したと言えそう。これから顧客向けチャットボットの開発競争が激化しそうだ。
 
発表文によると、Rufusは、製品カタログや、カスタマーレビュー、コミュニティQ&A、ウェブ上の公開データなどを学習、買い物客のあらゆる質問に答えてくれるという。
 
例えば「ランニングシューズを買いたいのだけど、トレイル用とロード用ってどう違うの?」という質問に対しては「トレイル用はオフロードの地形に合うように、安定性、トラクション、プロテクションがさらに強化されています。一方、ロード用は舗装された道ようによりスムーズで軽く作られています」といった感じで答えてくれるという。
 
また「バレンタインデーのプレゼントとしてはどんなものがいい?」という質問に対しては「バレンタインデーは大切な方への愛情を表現する特別な日です。プレゼントを選ぶときには、相手の好きなこと、性格、あなたとの関係性などを考慮しましょう。よく送られるプレゼントには次のようなものがあります」と答えて、花やブーケ、チョコレートなどへのリンクを表示するようだ。
 
このほかにも「ヘッドホンを買うときに気をつけないといけないことは?」「寒い時期のゴルフに必要な物にどんなものがある?」などといったアドバイスを求めることも可能。
 
また特定の商品ページでは、その商品に関する質問もできる。「これって、初心者でも使えるのかなあ」といった質問や「このジャケットって洗濯機で洗えるの」「この電動ドリルって持ちやすい?」などといった質問にも答えてくれるという。
 
これまでネット上で買い物をする際には、カスタマーレビュー記事などを幾つも読んでリサーチしないといけなかった。リサーチに何時間もかかることがあった。AIショッピングアシスタントは、24時間対応だし、待ち時間ゼロ、しかも幅広い知識を持っている。買い物前のリサーチが数段、落になりそうだ。
 
今後、ショッピングAIアシスタントのいるウェブサイトと、今までのチャットボットしか置いていないウェブサイトだと、家電に詳しい売り場担当者がいる家電量販店と、売り場担当者のいない家電量販店くらい大きな差が出るのではないだろうか。いや、もっと大きな差が出るかもしれない。
 
AmazonがAIショッピングアシスタントを搭載してくることは予想されていたことではあるが、企業内でのChatGPTの利用で精一杯の企業が、社外向けの利用に意識を向け始めるきっかけになりそう。言語AIの「攻め」の利用のフェーズが始まった。
 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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