「o1」でOpenAIが再び独走体制に

AI新聞

OpenAIのo1がAIの新たな論理的思考の基準を打ち立てた今、個人的に興味があるのは、ライバル企業やオープンソースコミュニティがこの「論理的思考」の領域でどのくらい早く追いつけるのかという点だ。

今年の春から夏にかけて、各社がOpenAIに追いつき、独走体制から競り合いの状況になっていた。しかし、OpenAIがo1で再びトップの座を取り戻し、独走状態に入った。この独走体制がいつまで続くのか、他のプロジェクトがどうやって追いつくのかが非常に興味深い。

既にいくつかのオープンソースプロジェクトが動き出している。例えば、GitHub上の「Open o1」というプロジェクトでは、OpenAI o1と同等の能力を持つAIモデルをオープンソースで開発しようとする取り組みが進んでいる。しかし、Open o1は現在いくつかの技術的な課題に直面しており、まだOpenAI o1と同じ性能には達していない。例えば、大規模なトレーニングデータと計算リソースの確保が難しいことや、データプライバシーに関する問題が挙げられる。また、特定の分野でのモデルの適用性を向上させるために、業界特有のデータでの訓練が必要だが、そのための労力はかなりのものになるとみられている。

さらに、Open o1プロジェクトは既存のAIトレーニング手法を基にトレーニングを行っているが、性能にはまだ限界がある。事前学習なしでのベンチマークテストでは、数学や一般知識の理解で一定の成果を示しているものの、複雑な推論タスクにおいてはまだ改善が必要だと言われている。

また、Anthropicの取り組みも注目に値する。AnthropicはClaudeシリーズのモデルで、AIがどのように考えているのかを全体から細部にわたって分析し、その論理的な推論能力を強化しようとしている。また、公平で安全なAIを目指し、偏見の少ない回答を生成するためのアルゴリズムの改良にも力を入れているようだ。。

現時点では、OpenAI o1の独走体制を崩すのは簡単ではないが、オープンソースプロジェクトやライバル企業の取り組みは着実に進展している。この競争がAI技術の進化を促し、最終的に社会全体に有益な結果をもたらすことを期待している。

【参考文献】
1. Open o1プロジェクトの技術的課題: https://github.com/OpenSource-O1/Open-O1

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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