AIが次のレベルに進化、その次はエージェントの時代

AI新聞

OpenAIのCEO、Sam Altman氏が9月18日、米携帯電話通信大手T-Mobileのイベントに登壇し、AIが次のレベルに進化したと明言した。OpenAIがこのほどリリースした最新AIモデル「OpenAI o1」が、業界で噂されていたOpenAIの次の進化かどうかで議論が起こっていたが、同氏の発言で「o1」が新たなAIパラダイムの最初のAIモデルであることが確定した。

T-Mobile Capital Markets Day 2024に登壇したAltman氏は、OpenAIが考えるAIの進化のロードマップのレベル2に「o1」で到達したと明言した。5段階のロードマップは7月にブルームバーグ通信が消息筋の情報として報道していたが、OpenAI幹部が公の場で、その存在を認めたのは初めて。

5段階ロードマップによると、レベル1はチャットボット、レベル2は論理的思考、レベル3はエージェント、レベル4は発明家、レベル5はAI組織。同氏によると、レベル1のチャットボットからレベル2の論理的思考に進化するまで、かなり時間がかかったが、論理的思考が可能になったことで、今後AIの急速な進化が続くという。「2、3カ月で新しいタスクが可能になったかと思うと、次の2、3カ月でまた別の能力を身につけることになるだろう」と語っている。

これまでのAIは、ネット上の情報を学習し、ネット上にまったく同じ情報があれば、答えることができたが、情報が少しでも異なれば間違った情報を答える場合もあった。

例えば「底辺が5cm、高さが2cmの三角形の面積を教えて」という問いに対して、この問いと同じ文章題とその解答がネット上にあれば、5平方cmと答えることができるが、同じ文章題と解答がなければ、適当な返答をすることがあった。

また5平方cmという解答に対してユーザーが「いいね」ボタンを押すと、この問いに対する解答が5平方cmであると学習するが、なぜ5平方cmであるのかは理解しなかった。

一方、論理的思考能力が搭載されたこれからのAIは、同じ文章題に対して、どういう順番でタスクをこなせば解答できるのかを自分で考えて計画できる。

例えば、①三角形の面積の公式を探す②数字を公式に当てはめる③計算する、という順番でタスクをこなす計画を立て、答えが5平方cmであることを導き出せるようになるわけだ。この解答に対し、ユーザーが「いいね」ボタンを押すとAIは、この論理的思考のプロセスが正しかったと理解する。

こうしたユーザーとのやり取りを繰り返すことで、AIの論理的思考能力がどんどん進化する。これまでのAIが「物知りAI」だとすると「o1」は「考えるAI」ということになり、ユーザーとのやり取りを繰り返すことでAIの論理的思考能力がどんどん向上し、最終的には人間よりも賢いAIが登場する可能性があると言われている。

Altman氏はまた、論理的思考が進化することで、AI進化の次のレベルである「エージェント」にも比較的早い段階で到達すると予測している。これまでのAIが質問に答えるだけのチャットボットであったのに対し、エージェントは高い論理的思考能力を身につけるので、ユーザーに代わって判断したり、行動したりできるAIになると言われている。

具体的にAIエージェントがどのような製品やサービスとなって社会に普及していくのかは未知数だが、Altman氏は「AIがエージェントになれば、社会に大きなインパクトを与えることになると思う」と語っている。

半導体大手NVIDIAのJensen Huang氏は「これからはエージェントがいろいろなツールの上に位置してツールを使っていくことになる。エージェントが切り拓くチャンスは巨大。今後2、3年のエージェントの進化は驚くべきものになるだろう」と語っている。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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