OpenAIは広告技術(アドテク)企業のSmartlyと提携し、ChatGPT内に「会話型広告」を導入する計画を本格化させた。ユーザーの問いかけに静的な広告枠が表示されるだけでなく、広告そのものが対話に応答する「ミニチャットボット」型の新フォーマットを構築するのが狙いだ。
OpenAIがChatGPTへの広告導入を開始したのは2026年2月9日。米国の無料ユーザー向けに試験展開を始め、わずか6週間で年換算1億ドルを超える収益を記録。600社以上の広告主が参加する規模に急成長した。 The Next Web
こうした急拡大を受け、OpenAIは広告体験の高度化に乗り出した。今回の提携でSmartlyは「クリエイティブ・アドテクパートナー」として第一号となり、エンターテインメント、リテール、スポーツ分野のブランドを対象に、リアルタイムでの広告パフォーマンス最適化から着手する。長期的には、ユーザーの入力に応じて内容を動的に変化させる会話型広告フォーマットの構築を目指す。 The Keyword
SmartlyのCEOを務めるLaura Desmond氏は、会話型広告の可能性を示す事例として、英小売大手Bootsのキャンペーンを挙げる。チャットボット形式でギフト提案を行うこの広告は、通常のMeta広告と比べて約5倍の販売効果をあげたという。同氏はこの形式を「対話を通じてフォローアップができ、何度でも問い直せる体験」と表現し、広告のパーソナライズと価値の交換を根本から変え得ると強調した。 MediaPost Publications
急ピッチで整備される広告エコシステム
Smartlyとの提携に先立ち、OpenAIはフランスのコマースメディア企業Criteoをアドテクパートナー第一号として採用。約1万7000社の広告主をChatGPTの広告枠に接続している。また元Meta副社長のDavid Dugan氏を広告部門のトップとして採用し、COOのBrad Lightcap氏のもとで体制を強化した。 TipRanks
広告の初期単価は1000インプレッションあたり約60ドルと高水準に設定されている。OpenAIはその根拠として、LLM経由でサイトを訪れたユーザーの購買転換率が他のチャネルと比べて1.5倍高いとするCriteoのデータを示している。現在は最低出稿額20万ドルの制限があるが、中小企業も参入できるセルフサーブ型ツールを今月中に公開する予定で、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドへの展開も控える。 The Next Web
プライバシーと信頼性の担保が課題
OpenAIは広告ポリシーとして、広告はChatGPTの回答とは別に明示的にラベルを付けて表示し、回答の内容に影響を与えないと明言している。ユーザーとの会話は広告主と共有されず、18歳未満のユーザーには広告を表示しない。政治や健康に関するセンシティブなトピックも広告対象から除外される。 OpenAI
業界内では、会話型広告が不快感なく大規模展開できるかを巡って慎重論も根強い。うまくいけばこれまでにない「インテント(購買意図)ドリブン型」メディアの新カテゴリーが生まれるが、失敗すればChatGPTをマスマーケット製品たらしめてきたユーザーの信頼を損ないかねない、との見方だ。 Tekedia
なおGoogle・Metaともにリアルタイム最適化型のAI広告フォーマットを大規模展開しているが、AIアシスタントのインターフェース内部に会話型広告ユニットを実装した先例はなく、この点でChatGPTの取り組みは業界初となる。 The Keyword
参考ソース
- The Next Web: https://thenextweb.com/news/openai-is-hiring-ad-tech-firms-to-make-chatgpt-ads-talk-back-to-you
- The Keyword: https://www.thekeyword.co/news/openai-smartly-chatgpt-ads
- MediaPost: https://www.mediapost.com/publications/article/414035/smartly-becomes-openais-first-creative-ad-tech-pa.html
- Tekedia: https://www.tekedia.com/openais-partners-with-smartly-to-advance-ad-ambitions-pushes-chatgpt-toward-conversational-commerce/
- OpenAI公式: https://openai.com/index/our-approach-to-advertising-and-expanding-access/
- TipRanks: https://www.tipranks.com/news/openai-teams-up-with-smartly-to-create-chatty-ads-inside-chatgpt

湯川鶴章
AI新聞編集長
AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。