OpenAIの巨大AIインフラ構想「Stargate」をめぐって、ここにきて「縮小」「失速」といった見方が広がっている。きっかけは、テキサス州アビリーンの旗艦データセンターで予定されていた600メガワットの追加拡張が見送られた、という3月上旬の報道だ。たしかにこの動きだけを見れば、OpenAIが野心的な拡張路線を後退させたようにも映る。だが、現時点で確認できる事実を積み上げると、Stargate全体が止まったというより、OpenAIが構想の進め方を現実に合わせて組み替え始めたということなのだと思う。
まず押さえておきたいのは、Stargateの公式な出発点だ。OpenAIは2025年1月、ソフトバンク、オラクルなどと組み、今後4年間で最大5000億ドルを投じて米国内のAIインフラを拡充する計画を発表した。これは最初から「単一の超巨大施設」を建てる話ではなく、複数拠点を束ねながら大規模な計算資源を確保していく国家級プロジェクトとして打ち出された。その後もOpenAIは、オラクルとの追加4.5ギガワットの開発計画を公表し、年内には5つの新拠点も発表している。少なくとも公式発表ベースでは、Stargateそのものの看板を下ろした事実はない。
では今回、何が見直されたのか。ロイター通信によると、見送られたのはアビリーン拠点そのものではなく、その一部である600メガワットの追加拡張計画だ。しかも既存のキャンパス運用計画は生きており、8棟のうち2棟はすでに稼働しているという。さらにロイター通信は、OpenAIとオラクルによる追加4.5ギガワットの全体計画は継続していると報じている。つまり、「アビリーンの拡張見送り」は事実でも、「Stargate全体が縮小した」という事実はなく、むしろ、必要な容量を別の場所に振り向ける再配置の色合いが濃い。
この点はオラクル側の反応からも分かる。同社は600メガワットの追加拡張計画の見直し報道の後、「アビリーンに関する一部報道は間違っている」と反論し、キャンパス建設は進行中で、OpenAI向け追加4.5ギガワットのリース確保も完了していると主張している。
では、なぜこうした計画の見直しが起きたのか。Sam Altman氏は3月のBlackRock Infrastructure Summitで、アビリーンでの運用が天候要因で一時止まったことや、サプライチェーン面の難しさにも触れている。需要が鈍ったからブレーキを踏んだのではなく、需要が大きすぎるからこそ、建設、電力、資金、供給網の制約の中でより柔軟な調達戦略に移っている、ということなのだろう。
最近は、OpenAIに対するネガティブな報道が多く目につくようになってきた。AI業界の競争が、もはやOpenAIの独走ではないことは事実だ。しかしOpenAIが依然として先頭グループの一員であることは間違いない。

湯川鶴章
AI新聞編集長
AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。