2030年ビジネス成功の秘訣は「高齢者を年寄り扱いしないこと」米ウォートンスクール教授

AI新聞

米ウォートンスクールのマウロ・ギレン教授によると、高齢者向けの市場が2030年までに世界最大の市場になり、この市場に焦点を当てた企業が今後大成功することになるという。同教授は、高齢者を年寄り扱いせずに、人生を積極的にエンジョイする生き方を支援することが、ビジネス成功の秘訣だとしている。


ギレン教授の近著「2030 How today’s biggest trends will collide and reshape the future of everything(日本語版は『2030 世界の大変化を「水平思考」で展望する』というタイトルで早川書房から6月に発売予定)」によると、同教授は人口や金融、テクノロジーなど複数の領域のデータを統合することで、未来を予測する独自の予測モデルを開発。それによると、企業が狙うべき市場は60歳以上を対象とした商品やサービスの市場だと言う。



なぜなら2030年までに、人口的には60歳以上が地球で最大の年齢層になり、さらに世界の資産の6割から7割を持つ最大の消費者層になるからだという。



本当だろうか?高齢者になると欲しいものがなくなるし、将来が不安なのでお金を使わないのではないだろうか?少なくとも私の抱く高齢者像は、そういうイメージだ。疑問に思ったので、zoom通話でギレン教授に直接取材してみた。



「確かに家や車などの耐久消費財は、若者の方が買うでしょう。しかし60歳以上の人たちも、いろいろなものを欲しがるのです」。「彼らは今までのライフスタイルを維持したい、人生を最大限楽しみたいと思っています」「今の60代、70代は、50年前の60代、70代とはまったく異なります。今の高齢者は、より健康なんです」「高齢者に対する考えを改めなければいけません」。



私の抱く高齢者のイメージは時代遅れだと言うのだ。そうなのだろうか。よく分からない。



ただ確かに活発な高齢者もいる。私の兄は外資系製薬会社を定年退職後、国内の製薬会社からオファーを断り、悠々自適の生活に入った。その理由は「健康なうちにスキューバダイビングを楽しみたいから」。コロナ前は、南の島に夫婦で頻繁に出かけていた。



また「もう歳だから」と諦めるな 10年後に始まる能力拡張時代 という記事に書いたように、ここ数年の長寿技術や能力拡張技術の進展は著しく、10年後には高齢者が驚くほど活発な人生を送ることになる可能性は確かに高い。



そうした元気な高齢者が人口的に世界最大の消費者層になる、と同教授は言うわけだ。



では具体的にどのような製品やサービスが今後有望なのだろう。



例えば金融関連では、高齢者は貯蓄目的ではない金融商品を求めるようになる、と同教授は指摘する。お金を貯めるのではなく、亡くなるまでにお金を使い切る方法こそが、高齢者のニーズになっていくのだという。



またVR(仮想現実)などの技術を使って高齢者の知覚能力を高める製品やサービスも有望だと言う。



そのほかにも、新たなビジネスチャンスはいろいろとあるはず。「日本のような国にとっての成功の秘訣は、60歳以上の人たちのニーズや要望を学ぶことです」。それを基にした製品やサービスを作って世界中で売ればいいと同教授は言う。



同教授によると、まず大事なのは、高齢者に対する考えを改めること。今日60歳の誕生日を迎えた人は、平均であと26年生きることになる。「もう一度人生があるようなもの。60歳の高齢者を、あと25年生きる若者としてとらえるべきです」。



高齢者に対する考えを改められるかどうか。「最初に考えを改めた企業は大きく成功することでしょう」と同教授は強調している。

 

マウロ・ギレン教授は、株式会社エクサウィザーズ主催のオンラインカンファレンスExaForum2021(5月18日ー19日)に登壇することが確定しました。

 

 

 

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湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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