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日本はリモートワーク、ギグエコノミーで復活できるー「2030」著者のマウロ・ギレン教授

  • 2021.6.17

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日本はリモートワークとギグエコノミーのリーダーになれる可能性がある」。6月16日に早川書房から発売されたマウロ・ギレン著『2030 世界の大変化を「水平思考」で展望する』の日本語版の帯に書かれた一文だ。

 

私自身、この「2030」の英語版を読み、その内容に感銘を受けて、株式会社エクサウィザーズ主催のオンラインカンファレンスExaForum2021で、著者である米ウォートン・スクールのマウロ・ギレン教授にインタビューさせていただいた。そのご縁もあり、印刷されたばかりの日本語版をこのほど献本いただいた。

日本語版には「日本語版あとがき」として、日本の読者に向けたギレン教授からのメッセージが9ページほど追加されている。上に紹介した帯の一文は、この「日本語版あとがき」の一部だ。多くの示唆を含む文章なので、関連する部分を書き出し、それに対する私なりの見解を述べたい。

 

関連する部分は次の通り。

 

 

日本はリモートワークとギグエコノミーのリーダーになれる可能性がある。そのどちらも、60歳を過ぎても仕事を続けたい、少なくとももっとフレキシブルにパートタイムで働きたい人たちに、非常に好まれる働き方だからだ。日本は世界でも極めて生活水準が高く、平均寿命もトップレベルだ。日本経済復活の秘訣は、あらゆる世代の才能と経験を結集し、一丸となってグローバル経済で競争することだ。

 

 

ギグエコノミーのギグとは、もともとはライブハウスでミュージシャンたちが演奏する一回の仕事のことを言う。同様に好きなときに仕事を受けるという自由な勤務形態のことが、ギグエコノミーと呼ばれるになった。日本のギグエコノミーでは、ウーバーイーツやタイミーなどがその代表例だ。一回限りの仕事なのに、相手のことを信用できるだろうか。信用できるかどうかの目安となるのが、5個の星で表すレビューやコメントだ。スマートフォンを通じたレビューやコメントを集計できるようになったことで、初めて成立した新しい雇用形態だと言える。

 

「2030」の主張の1つは、最大の消費者層が若者ではなく高齢者になり、世界最大の消費市場が欧米ではなくアジアになる、というもの。これからの高齢者は、健康で長生きで財政的にも豊かになっていく。いまだに多くの企業やブランドは若者をターゲットにしているが、最初に元気な高齢者をターゲットにした企業は大成功するでしょう」とギレン教授は主張している。

 

私が同教授を取材した際に日本企業向けアドバイスとして「まずは日本の高齢者向けの製品、サービスで成功し、それをアジアの高齢者向けに販売すること」という話をいただいたが、今回のあとがきで同教授は、製品、サービスの具体例として「リモートワークとギグエコノミー」を挙げている。

 

日本の企業には定年退職制度を持っているところが多く、60歳や65歳になると、突然仕事がなくなる。仕事は、生活の糧を稼ぐためのものだけではなく、社会貢献でもあり、社会とのつながり、生きがいでもある。定年しても、お金以外の理由で仕事をしたいと考える高齢者は多いと思う。特に優秀で健康な高齢者ほどそう考えるのではないだろうか。

 

といっても満員電車に揺られて9時5時勤務に戻りたいわけではない。できれば家や旅行先からリモートで、好きなときに好きな時間だけ働きたい。リモートワークでギグエコノミーの仕組みがあれば、多くの優秀な定年退職者が飛びつくことだろう。

 

高齢者が無理なく働ける仕組みは、社会にとっても好都合だ。無理なくアクティブな生活を続けている人のほうが、心身ともに健康を維持でき、医療費も少なくて済むからだ。

 

そしてギレン教授の言うように、元気な高齢者の才能と経験を活用することで世界経済に貢献できるのであれば、それは非常にすばらしいことだと言える。

 

ではどのようなギグエコノミーの仕組みが有望なのだろうか。ウーバーイーツやタイミーのような労働集約的な業務では、当然ない。またその仕組みは、高齢者にとって使いやすいデザイン、機能でなければならない。

 

高齢者向けのギグエコノミーの仕組みを試行錯誤する場所として、高齢化が世界最速で進む日本は最適だと思う。日本でなければできないと思う。そしてギレン教授の言うように日本で完成した高齢者向けギグエコノミーの仕組みは、世界に広く普及していく可能性がある。

 

ワクチン接種が始まったことで、コロナ禍の出口が見えてきた。コロナ禍の影響でDXが進み、社会が大きく変化しようとしている。新しいことに挑戦する最高のタイミングかもしれない。

 

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。