エネルギーが無料になる!?ほか ニュースダイジェスト 3-9-2022

AI新聞
ここ最近、個人的に気になった世界のテクノロジー関連ニュースを集めました。この記事は、会員向けの限定公開記事です。未確認の情報や個人的見解を含みますので、一般公開はご遠慮くだい。
 
 

◎エネルギーや何もかもが無料になる時代に、戦争する意味あるの?

 
MITテクノロジーレビュー誌は、今年の10大テクノロジーの1つに、電力会社用大型電池を選んだ。急速な技術革新を受け風力発電や太陽光発電は、既に最も安価な発電方法になった。
 
ただ問題は蓄電。風の強い日、晴れの日の余剰電力を蓄えておく電池がないと、風のない日、曇りの日は電力不足に陥る。
 
そんな中、鉄フロー電池が電力会社用大型電池として、期待できるレベルにまでなってきたとのこと。技術革新がこのまま進めば、消費電力はすべて自然エネルギーでまかなえるようになるかも。
 
一方で核融合の領域でもブレークスルーが続いている。2030年の半ばには実用化されるかも、という話もある。
 
この傾向が続けば(多分続くだろう)エネルギーは無料に近づいていくと思われる。いつそうなるのかは、まだはっきりとは分からないけど、方向性は間違いない。
 
エネルギーが無料になるってすごくない?エネルギーが無料になれば、それにともなっていろいろなものが無料もしくは低価格になっていくはず。
 
欠乏の時代から、豊かさの時代に、われわれは向かっている。
 
なのに戦争する必要あるの?核兵器を持つ必要あるの?何を求めて争うの?欠乏の時代の考え方から抜け出したほうがいいんじゃない?
 
 
 

◎電力会社用バッテリー

ほんの2、3秒だったらしいんだけど、昨年4月にカリフォルニア州で再生可能エネルギーが同州の電力消費量の94%までの発電に成功したらしい。過去最高記録。
 
この感じなら近い将来、電力消費量の100%を再生可能エネルギーでまかない続けることが可能になりそう。
 
ただ問題は蓄電。カリフォルニアといえども1年中晴れというわけではないから、晴れている日に発電したものを蓄電する必要がある。
 
そこで期待されているのが鉄フロー電池。
 鉄フロー電池は大きさはあるみたいなんだけど、コストが一番安いらしい。有力ベンチャーとしてはオレゴン州のESS社と、マサチューセッツ州のForm Energy社。ESS社はソフトバンクが出資しているらしい。
 
 
 
 
 

◎核融合炉、2030年代には実用化?

再生可能エネルギーの進化もそうだけど、核融合が実用されれば、環境に優しく、放射能汚染の心配のない、無料もしくは低コストエネルギーの時代がくるかも。MITテクノロジーレビューは「核融合炉の実用化」を、今年の10大テクノロジーの1つに挙げている。
 
それによるとCommonwealth Fusion Systemsの開発した核融合炉向けの磁石が昨年9月に画期的な成果を上げたらしい。
 
またいろいろ調べていると、核融合に関するブレークスルーが続いているらしい。例えば英Jet Laboratoryがこれまでの記録を大きく塗り替える11メガワットの発電に相当する59メガジュールのエネルギー生成に成功したという。BBSは大きなグレークスルーと絶賛している。
 
まあ一方でIndependent誌は「核融合はお金がかかる幻想」という記事を2月17日にアップ。「研究者は、もうすぐできるって言い続けて、もう何年経っていることとか」てこき下ろしている。
 
素人にはよく分からないけど、いろいろと動きがあることだけは事実だし、注目しておく必要があると思う。もし本当にあと10年ぐらいでエネルギーが無料もしくは非常に低コストになるんだったら、社会とか常識とかひっくり返ると思うから。
 
 
 

◎proof of stakeでWeb3がさらに躍進するか?

Web3って、Power to the Peopleとか非中央集権とか、いいこと言ってても、電力めちゃくちゃ食うじゃないか、環境破壊でしょという批判がある。昨年1年間でビットコイン運営の消費電力が100テラワット時間以上だったらしい。これってフィンランドの1年間の消費電力くらい。
 
なぜこんなに消費電力を食うのかというと、ビットコインを維持運営する方法として、新しいデータの中に入れる数学的パズルを一番先に解いた人に謝礼のビットコインが支払われる仕組みになっているから。世界中の人が謝礼欲しさにコンピューターを何台も連ねて計算をするので、消費電力が跳ね上がることになっている。
 
そこでイーサリアムなどの暗通通貨の運営グループでは、誰が速く解いたかではなく、誰がイーサリアムを一番多く持ってかで、抽選する権利を与え、抽選で当たった人が新しいデータの認証をし、謝礼を受け取ることができるようにしようとしている。これまでの手法がProof of Workと呼ばれていたのに対し、この新しい手法はProof of Stakeと呼ばれる。
 
イーサリアムのVitalik氏によると、5月くらいにはこのProof of Stakeが完成する見通し。
 
もし完成して問題なく機能すれば、暗号通貨はより多くのアプリケーションに利用されることになりそう。そういう意味でMITテクノロジーレビューは、Proof of Stakeを今年の10大テクノロジーの1つに挙げている。
 
イーサリアム以外の暗号通貨は、イーサリアムが成功するのかどうか、様子見らしい。
 
 
 

◎CO2吸収工場

MITテクノロジーレビューは、CO2吸収工場を今年の10大技術の1つに挙げている。去年の9月に世界最大のCO2吸収工場がアイスランドにできたそう。大気中から年間4000トンのCO2を吸収し処理し地下に埋めれば石になる。処理に使う電力は地熱発電を利用する。
 
既にMicrosoftなどのクライアント企業の委託を受けて、クライアント企業の名前でCO2を吸収するのだとか。クライアント企業は、業務の中でやむなく排出するCO2の量と相殺して政府や国際機関にCO2排出量を報告できるわけだ。
 

これから地球の僻地にこうした工場がいっぱいできてくるんだろうな。増えてくれば、大量生産で低コスト化も見込めるだろうし。

 
 
 
 

◎ペロブスカイト太陽電池、4月から出荷

京大発ベンチャーのエネコートテクノロジーズ社が、ペロプスカイト太陽電池の出荷を4月から開始。同電池は軽くて薄く曲げることが可能。建物の壁や自動車の屋根に設置できる。
 
いろいろ動きが出てきてますねえ。
 
ペロブスカイト太陽電池 京大発新興が製品化:日本経済新聞
 
 

◎AlphaFold2の偉業で、製薬業界が2年以内にどう変わる?

創薬で一番大変なのが病原体の3Dモデルを特定すること。それができればその形状にパズルみたいに合致する分子が薬になる。これまでは研究者の勘と試行錯誤で数年かかっていた作業なんだけど、DeepMindのAlphaFold2は数時間でやってしまう。これまでに80万個のタンパク質の形状を特定していて、来年中には1億個以上の特定を見込んでいるらしい。
 
DeepMindはIsomorphic Labs社という子会社を作って、世界中の研究所にこのAIを提供し始めた。ガンや、抗生物質耐性、新型コロナなんかの薬の開発が始まっている。いろいろな領域で成果が出始めるのは1、2年後らしいんだけど、製薬業界ってどう変わっていくんだろう?
 
MITテクノロジーレビュー誌が、タンパク質解析AIを今年の10大テクノロジーの1つに選んでいる。
 
 

◎NASAの未来宇宙研究、酸素生成する宇宙服とか

米航空宇宙局(NASA)が17の宇宙関連技術に対して510億ドルの研究予算を支給するNASA Innovative Advanced Cenceptsを発表した。
 
研究プロジェクトにどんなのがあるかと言うと、火星の大気中の二酸化炭素を使って酸素を生成する宇宙服や、金星を視察するための鳥型ドローンなど。
 
 

◎コロナは武漢の市場から感染拡大

 
中国がわざとウイルスを撒き散らしたと、トランプ前大統領とかが言ってたけど、最新のレポートでは武漢の市場から感染が広がったという結論になったもよう。
 
コロナ禍が起こる前に、大自然の近くに大都市が急にできたために動物由来のウイルスが拡散しパンデミックを引き起こす可能性がある、と一部の有識者が指摘していたけど、やっぱりそうだったんだ。
 
根本的な対策を考えないと、これからも次から次へと新種のウイルスが出てくることになりそう。
 
 

◎「完全自動運転車は来年実現」イーロン・マスク氏

「来年実現」って毎年言い続けて、もう9年になるらしい。オオカミ少年なのかw それとも本当に来年実現するのか?
 
 
 
 

◎AI学習用の合成データがビッグビジネスに

これもMITテクノロジーレビューが今年の10大テクノロジーに選んでいる。
AIは学習用のデータがなければただの箱。学習用データが簡単に揃う領域からAI革命が普及していってるんだけど、どうしても十分なデータがない領域もある。そうした領域向けに学習用データを生成するというビジネスが伸びているらしい。
 
まあ前から一部では存在してたんだけど。例えば自動運転車を実際に街中を走らせて学習させるには時間とお金がかかり過ぎるから、仮想空間の中で車を走らせて学習させるみたいなのもあった。デジタルツインという概念も、仮想空間の中でAIに学習させることで、学習コストを下げようという試み。
 
でも去年ぐらいから、学習用データを合成するスタートアップや大学が急増しているらしい。例えばDatagen社やSynthesis AI社などは、顔認証AIを賢くさせるために、データ数の少ない人種の顔を合成で作ったりするという。
 
 
 
 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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