「コロナ対策でAIは期待はずれ」米医学界の権威Eric Topol医師にzoomで聞いてみた

AI新聞

 
「コロナ対策に関しては、AIは期待はずれというか、あまり貢献できていません」。米医学界の権威、Eric Topol医師はそう切り捨てる。

同医師は、論文引用数で10位以内に入る世界的なゲノム学の研究者で、「医療の創造的破壊」「患者は見ている」など、ベストセラーとなった著書も持つ。日本語にも訳された近著「ディープメディスン」では、「AIが医療のあり方を劇的に変える」として、医療に対するAIの可能性を大きく持ち上げている。

にもかかわらず、コロナに対してはAIは期待はずれだと言う。どういうことなんだろうか。zoom通話を通じて同医師に直接取材してみた。

「候補ワクチンの絞り込みのプロセスにおいてAIがある程度の貢献を果たしました。でも今回AIが活躍できたのは、その程度です」と同医師は言う。

同医師によると、今回のパンデミックに関しては、分からないことが多過ぎるという。「なぜウイルスが心臓に侵入するケースがあるのか」「なぜ症状が1年も続くケースがあるのか」「なぜ特定の人は後遺症が長引いて仕事に復帰できないのか。分からないことだらけです」という。

感染者によって症状が大きく異なるのであれば、遺伝子情報に照らし合わせて、どの遺伝子を持つ人がどんな症状になるのかをAIで解析できるはず。Topol医師は、遺伝子情報をベースに患者一人一人にあった医療を提供するオーダーメイド医療を早くから提唱していた一人でもある。なぜAIを使ったオーダーメイド医療を促進できていないのだろう。

これに対し同医師は「コロナ感染に遺伝子が関係していることを示す症例はあります。ただ数が少な過ぎます。自分の遺伝子情報を解析している人の数自体が、まだまだ少な過ぎるのです」と言う。

オーダーメイド医療もダメ。AIも役に立たない。医療はコロナにどう立ち向かえばいいのだろうか。

同医師は「ユニバーサルワクチンを開発すべきだ」と言う。コロナウイルスは変異株が次々と登場している。1つのウイルスに対処するワクチンではなく、ウイルスが変異しても対処できるワクチンを開発する必要がある、というわけだ。ちなみに「ユニバーサルワクチンの開発には、AIが大きく貢献することになる」と同医師は指摘する。

ユニバーサルワクチンに関して同医師は「Variant-proof Vaccines invest now for the next pandemic(変異株に負けないワクチン 次のパンデミックに備えて投資すべき)」という意見を、学術誌ネイチャーに今年2月に発表したという。

Eric Topol医師は5月18-19日開催のExaForum2021に登壇することが確定しました。

 


   <Eric Topol医師>

 

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ExaForum2021ではTopol氏のほか、米ウォートンスクール教授のMauro Guillen教授、未来学者のSteve Brown氏、など、米国の著名なスピーカーが多数登壇します。このイベントに参加するだけで、AIによって劇的に変化する世界のビジネスの今と近未来の姿を、簡潔に学んでいただけると思います。

またこのイベントはvFAIRSというバーチャルイベントのプラットフォームを採用。オンラインイベントの世界最先端の姿を体験していただけます。

参加費は無料。申し込みは以下のリンクから。

 

 

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湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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