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AIと人間の知能の共同作業。拡張クリエイティビティーという新しい働き方

  • 2021.5.13

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米ベストセラーThe Innovation Ultimatumの著者で、未来学者のスティーブンブラウン氏は、人間とAIの知能が共同で作業することで、よりクリエイティブな仕事が可能になる時代が始まったと言う。



具体的に、どのようなことをいうのだろう。zoom通話で同氏に直接取材してみた。



「例えばAutoDestのソフトの最新機能が、その例です」とブラウン氏は言う。AutoDeskと言えば、建設業や製造業などで使われる設計ツールのメーカーだ。



「デザイナーがこのツールを使って、例えばシューズをデザインしたとしましょう。デザイナーは、デザイン案を2、3つ作ります。すると、それを基にAutoDeskのAIが類似のデザイン案を数百も作ってくれます」「さらにAIはその数百のデザイン案をシミュレータにかけて『デザインのここの部分をこう変更すると製造コストが5%下がりますよ』であるとか『こうデザインを変更すると、この部分の強度が増しますよ』などといった提案をしてくれるんです。そしてそうした提案をすべて考慮して、デザインを修正したり、最終案を決めるのが、また人間のデザイナーの役割になるんです」。



ソフトウエアが人間の仕事をサポートしてくれるわけだ。しかしワープロや表計算といったようなソフトウェアも、人間の仕事をサポートしてくれる。そうしたソフトウエアとどう違うのだろう。「ワープロや表計算は、ユーザーの生産性を高めることができるツールです」。文書を手書きで作成する場合なら、下書きして清書したり、原稿を印刷所に出したりという手間と時間がかかる。ワープロソフトを使うことで手間と時間を大きく削減できる。仕事の生産性が向上するわけだ。ワープロや表計算が生産性ソフトと呼ばれる所以だ。



しかし逆を言えば、手間と時間さえかければ、ソフトを使わずとも、同様の結果を出せることになる。



一方で上記の設計ソフトの場合、デザイナーに話を聞くと「クリエイティビティが向上した」と答える人が多かったという。完成したデザインは、どれだけ手間と時間をかけても、人間だけでは絶対にできなかったデザインだと言う。もちろんAIだけでも、絶対にできない。つまりAIの人間の知能が合体したことで可能になったデザインだという。それが生産性ソフトと呼ばれるワープロや表計算などと大きく異なる点だと、ブラウン氏は指摘する。


生産性ではなく、クリエイティビティを向上させる。ブラウン氏は、これがIT業界の新しいトレンドになると予測する。このトレンドを同氏は「拡張ワーク」「拡張クリエイティビティ」「ハイブリッドワーカー」などといった言葉で形容する。まだ同氏の中でも、バスワードになるような言葉を選び切れていないのだろう。新しいバスワードが決まった時点で、同氏はその言葉をタイトルにした次の本の執筆に取り掛かるのかもしれない。



さてではアイデアやクリエイティビティって、どのように高めることができるのだろうか。



東京大学の暦本純一教授は、世界中のスマートフォンに搭載されているピンチインやピンチアウトのような操作方法を世界で初めて考案した人物だ。つまりアイデアを生み出す達人だ。その達人が発想法について書いた近著「妄想する頭 思考する手」によると、アイデアは2つのプロセスを通じて生まれてくるという。1つは、妄想する段階、もう1つはその妄想を形にする段階だ。妄想だけでは、形にはならない。その妄想をベースに、プログラミングしたり部品を組み立てたりする能力が必要だというわけだ。



また妄想が先で、それを形にするのが後という順番では、必ずしもない。何か形にしようと手を動かしているときに、新しい発想が浮かぶこともあるらしい。



つまり妄想力と、形にする力は、別々に存在しているより、合体することで、よりクリエイティビティが高まるわけだ。



上記のブラウン氏の例では、デザイナーが妄想を担当し、AIが形にするところを担当している。そしてそれぞれが別々に存在するのではなく、作業を重ね合わせることで、よりクリエティブなデザインが生まれるわけだ。



ブラウン氏によると、こうしたAIと人間の知能の共同作業は、今後いろいろな領域で見られるようになるという。「拡張クリエイティビティ」以外にも、「拡張判断」、「拡張決断」などと呼べるようなAIも登場してくることだろう。AIは人間の仕事を奪うのではない。人間の能力を拡張するようになる。同氏は、そう強調している。



スティーブ・ブラウン氏、暦本純一氏ともに、株式会社エクサウィザーズ主催のオンラインカンファレンスExaForum2021への登壇が確定しました。


 

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ExaForum2021ではブラウン氏、暦本教授のほか、ウォートンスクールのマウロ・ギレン教授、米医学界の権威エリック・トポル医師など、著名なスピーカーが多数登壇します。このイベントに参加するだけで、AIによって劇的に変化する世界のビジネスの今と近未来の姿を、簡潔に学んでいただけると思います。

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湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。