これまでいろいろなビジネスを見てきて思うのだけど、ビジネスに最も重要なことは波に乗ることだと思う。Amazonにしろ、楽天、ソフトバンクにしろ、インターネットという波に乗ったので、今日の姿があるのは間違いない。
そして今から2030年にかけての世界的な大きな波といえば、やはり高齢化だ。高齢化の最先端である日本で、高齢者向け製品やサービスを作って海外、特にアジアで展開するのが一番の勝ち筋である。これは既に多くの人が言っていることだけど、ウォートンスクールのギレン教授と話していて、さらに強く確信するようになった。【関連記事:2030年ビジネス成功の秘訣は「高齢者を年寄り扱いしないこと」米ウォートンスクール教授】
2030年にかけて、世界で最も裕福で、最も人口が大きくなるのが、アジアの高齢者層になる。やはりここを狙うしかない。
一つ大事なのは、高齢者に対する認識を変えることだ。高齢者を大別すると、病弱で貧困層の高齢者と、健康で富裕層の高齢者がいる。高齢者向け製品、サービスというと前者を想定する人が多いが、市場として急成長が見込まれるのは後者だ。
ほとんどすべての企業が、この健康でお金を持っている高齢者向けに製品、サービスを作っていくことになるのだと思う。というか、そういう企業しか大きく成長しないのではないかと思う。この成長市場を狙っている企業のことが、Age Tech企業と呼ばれるようになってきた。最近Forbes誌がAgeTechに関する記事を書いていたので、高齢者向けテクノロジー企業はAgeTech企業という呼ばれ方に収れんしていくように思う。
ただ自らAgeTech企業と名乗るのはNG。一般向け製品と見せかけて、機能は高齢者を意識したものにする必要がある。そういう意味で、Appleは既にAgeTech企業の代表格である。最新のApple Watch は心拍数や心拍変動のみならず、血中酸素濃度まで計測できるようになってきた。血中酸素濃度なんて若者にはほとんど意味のない数値だ。Apple Watchには転倒検知機能もついているが、これも若者には不要。だが高齢者にとっては非常に優れた機能。お金に余裕のある高齢者は、こうした健康関連の機能が追加されるたびにApple Watchを買い換えることだろう。
つまり高齢者向けと謳わないが機能は高齢者に非常に役に立つ、という製品、サービスがこれからの売れ筋になっていくのだと思う。
健康な富裕層をターゲットにするという話をすると、「病弱な貧困層を無視するのか」という批判が必ず起こる。だが、これまでのデジタル技術の歴史を見る限り、富裕層向けに開発された技術は、必ず数年後には価格が下がり貧困層の生活を豊かにしている。
まずは富裕層向けに技術を開発する。これが王道。その逆はない。