米誌MIT Technology ReviewのThe US already has the technology to test millions of people a dayという記事を読んで。
コロナ禍を収束させるのには、国民全員を検査し、感染経路を把握するしかない。そういう意見が米国で散見されるようになってきた。(関連記事「米ハーバード大が、コロナ禍から経済を再開するための戦略を発表」)
問題は、国民全員を検査することが可能なのかということだ。米国では一日に21万人を検査しているという。これだけでも日本に比べればかなり多いが、専門家によればコロナ禍を収束させるには、一日に数百万人を検査する体制が必要だという。
果たして、そんなことが可能なのだろうか。
MIT Technology Review誌に寄稿したカリフォルニア大学のSri Kosuri教授などの研究者グループによると、特に新しい技術を1から開発しなくても、既存の技術を組み合わせたり改良することで100万人以上の検査体制の構築が可能だという。
同教授らによると、CrisprDNAやRNA認識ツールを使ったSherlockやDetectrと呼ばれる手法が、新型コロナウイルスの検査に応用できる可能性があるという。検査に応用できる可能性がある検査手法は、全部で数個。これらの複数の検査手法の研究開発を同時進行で続ければ、そのうちの1つ2つは検査ツールに応用できるかもしれないという。同教授らによると、1つの手法に絞って労力を集中させるという考え方もあるが、時間がないのでとりあえず複数の手法を同時に試す方がいいという。同教授らは、「(たとえ複数の手法が確立したとしても)2つ以上の手法が必要になるかもしれないので、(問題ない)」と語っている。
検査手法の確立と同様に、すべての検査プロセスにもイノベーションが必要だという。検査サンプルの収集、取り扱い基準、検査キットの製造、物流、データの取り扱いシステム、請求の仕組みなど、既存の病院以外に検査できるインフラを構築する必要があるという。
例えば供給が間に合わなくなっている検査用の専用綿棒でなくても、市販されている綿棒でも検査できるようにしたり、唾液を使った検査方法の可能性も探るべきだという。今は検査済みサンプルに氏名を書くことになっているが、これをバーコードで代替し、スマホで読み取ることで、データ管理を簡単にすることも必要だろう。また医療従事者でなくても、自宅や会社で自分自身で簡単にできる検査キットの開発も必要だろう。健康な若者などリスクの少ない人たちを一か所に集めて簡単な一次検査を行い、陽性反応が出た人に対してはより正確な検査を行うという集団検査方法も検討すべきだと、同教授らは提案している。
こうした集団検査方法を採用するには、民間企業や、非営利団体、大学、政府機関などの協力が不可欠になる。同教授らはこうしたことで一日に100万人以上を検査する体制の構築は可能で「既に一部で準備が進められている」としている。