コロナウイルスと闘うAIコンソーシアムが米で発足

AI新聞

米国の産官学が一体となってAIを使って新型コロナウイルスに対抗し始めた。

米産官学コンソーシアム「COVID-19ハイ・パフォーマンス・コンピューティング・コンソーシアム」によると、米国内の31箇所のスーパーコンピューターを、コロナウイルス関連の世界中の研究者に無料で開放するという。コロナウイルスの構造を解析するためのシミュレーションや、ウイルスの付着場所の発見、感染拡大地域の予測などに、AIとスーパーコンピューターを利用できるとしている。

既に35以上のプロジェクトの提案が寄せられており、運営委員会が1日に2〜6の提案を審査し、どのプロジェクトにどのスーパーコンピューターを割り当てるのかという作業を急ピッチで進めているという。

同コンソーシアムは、IBMと米エネルギー省が中心になって創立。Google、Microsoft、Amazon、ヒューレット・パッカード、NVIDIA、AMDなどの民間企業に加え、米航空宇宙局(NASA)や、米科学財団(NSF)、ピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センター、ワイオミング・スーパーコンピューティング・センター、ローレンス・リバモアなどの6箇所の国立研究所などの公的機関、マサチューセッツ工科大学(MIT)やカリフォルニア大学、テキサス大学などの大学の研究所なども協力している。

こうした産官学のコンピューターを合わせた計算能力は400ペタフロップ以上。スーパーコンピューターの定義が8ペタフロップ以上なので、スーパーコンピューターを50台、合わせた計算能力になる。

採択された研究プロジェクトの1つに、Argonne国立研究所のCOVID-19の治療方法の開発がある。同研究所は、AIでウイルスの生物学的メカニズムを解明し、治療方法の開発を急いでいる。

ドイツのAIベンチャーInnoplexusは、新薬を開発するための新たな分子を生成するためにディープラーニングを使うという。ドイツの自粛政策で自社のコンピューターを利用できなくなったので、遠隔で米国のコンピューターを利用させてもらうのだという。

MITは、人間のレセプターと同じような機能を持つレセプターの開発を急いでいる。大量に摂取しても副作用のないレセプターを、スーパーコンピューターを使って探し出そうとしているようだ。

NASAの研究者は、コロナウイルスで肺炎になるリスクのある遺伝子を特定。そのような遺伝子を持つ人たちを特定するために、スーパーコンピューターを利用する考えだという。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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