不老長寿の薬、5年以内に実現?

AI新聞

米誌MITテクノロジーレビューが、「10 Breakthrough Technologies 2020」特集の中で、アンチエイジング薬を取り上げている。

同誌によると、老化を遅らせることができるアンチエイジング薬は、心臓病や、痴呆、癌など、高齢者がかかりやすい疾患などに効果があると期待されている。新しいタイプのアンチエイジング薬が人体実験段階に入ったことで、同誌は5年以内にアンチエイジング薬が実現すると予測している。

新しいタイプのアンチエイジング薬は「セノリティックス」と呼ばれる。「セネセント細胞」と呼ばれる細胞の働きを抑圧することから、こう呼ばれるらしい。

セネセント細胞は、わずかな炎症を起こすことで正常な細胞修復のメカニズムの邪魔をし、周辺の細胞に有毒な環境を作るという

記事によると、サンフランシスコのバイオベンチャーUnity Biotechnology社が6月に、膝の変形性関節症の患者に対する最初の人体実験に成功。2020年下期にはより多数の臨床試験の結果が出るという。

同社は加齢が原因の目や肺の病気に関する薬も開発中という。

このほかにもAlkahest社というベンチャー企業が、アルツハイマー病やパーキンソン病の薬を開発していたり、Drexel大学が皮膚の老化を遅らせる薬の研究をしているという。

これらの薬は、あくまでも高齢者の疾患に対する治療薬としての研究開発が進んでいるようだが、健常者が若返りを狙ってアンチエイジング薬を服用する可能性も十分にありそうだ。

治療以外の利用を保険適応外にして価格をつりあげることで広く利用されることを防ぐということも考えられる。しかしそれでも富裕層は、高額料金を支払ってアンチエイジング薬を購入して服用することだろう。

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは著書「ホモ・デウス」の中で、富裕層が最新技術を駆使して長寿を目指すことで、人類は長寿の人類種「ホモ・デウス」と一般の人類種「ホモ・サピエンス」の2つの生物学上の種に分岐すると予測している。

21世紀がハラリの予測通りに進むのかどうかは分からないが、社会に大きな変革を起こす不老長寿薬が、いよいよ現実のものになりそうだ。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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