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AI時代の最重要スキルは、自分とつながること。 「人生の目的の見つけ方(勝屋久著)」から学ぶこれからの生き方【書評】

  • 2020.2.1

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AI時代にどのようなスキルが必要になるのか。プログラミングや読解力という意見があるが、僕は「自分の本質とつながる」というスキルが一番大事になると考えている。

小学校でのプログラミング教育や、大学でのAI関連の勉強することも大事だと思う。昔の「読み書きソロバン」が今は、プログラミングやAIスキルなんだと思う。ただ50年前には有効なスキルだったソロバンが今ではほとんど不要なスキルになったように、今のプログラミングやAIスキルが若い世代にとって生涯を通じた有効なスキルになるとは到底思えない。10年後に有効かどうかも分からないと思う。

同様に読解力が50年後も有効なスキルかどうかは分からないと思う。AIが東大の入学試験で読解力だけ合格点を取れなかったことから、AI時代には読解力が必要になるという主張がある。東大に入学できることがAI時代を生き残るスキルとつながるのかどうかは、よく分からない。しかしそんなことよりも僕自身は、読解力の今後の重要性さえ疑わしいと思っている。

これまで何世紀もの間、情報を広く普及させるには文字というメディアが最も有効だった。広く伝えるには文字しかなかったし、それを読んで理解する読解力も何世紀にも渡って重要スキルであり続けた。

しかし今は簡単に動画を撮ってインターネット上で公開できる時代。動画は文字よりも圧倒的に情報量が多い。これまでYouTubeは子供や若者向けの娯楽作品が多かったが、昨年ぐらいからニュースやビジネス情報を取り扱うチャンネルが増えている。この傾向は今後ますます顕著になり、本に書くような情報もどんどん動画になっていくことだろう。何十年後かの未来には、本の読解力は過去情報にアクセスするためだけの限定的なスキルになると思う。今の古文、漢文のような感じになると思う。なぜなら、繰り返しになるが、文字より動画の方が情報量が圧倒的に多いからだ。そして人間にとって、音声と表情で情報を伝えることが、文字よりも自然な情報伝達方法だからだ。またネットの双方向性を利用して、分からない部分を質問すれば、即座にどこかからか解答が寄せられてくる。情報収集は文字を通じた一方通行から、映像、音声を交えた双方向に軸足を移していくのだと思う。

今はまだ重要な情報の多くは文字で記録されているので読解力は重要だが、何十年間かのスパンで見れば、重要スキルの座にい続けることは多分ない。断言してもいい。

僕には高校生と大学生の二人の息子がいる。二人には、とりあえず即戦力となるデジタルスキルと読解力を身につけるように勧めている。ただそれらのスキルが、彼らの一生を通じての最重要スキルになるとは到底思えないのだ。

さて本題に入ろう。僕はAI時代に不可欠な最重要スキルとは、自分の本質とつながることだと思う。AIの最大の強みは、過去の情報からその傾向をつかみ、その傾向の延長線上に未来を予測すること。そのスキルでは、AIは人間より圧倒的に優秀だ。

一方で人間にあってAIにないものは、思いやり、愛、志、直感、過去情報の延長線上にない未来予測など。愛する力、志を貫く力、直感力、こうした能力は、自分の本質とつながることで、培われるスキルである。自分の本質とつながるには、「学生はこうあるべき」「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」などと言った社会通念を一つ一つ解放していかないといけない。社会通念を手放したときに、自分が本当にしたいこと、自分が得意なことが形を見せ始める。それが自分の本質とつながる、という意味だ。

自分の好きなことなので忙しくてもストレスにならないし、得意なことなのでそこまで努力しなくても結果を出せる。人との関係もよくなるし、所得だって増えるかもしれない。

ただ社会通念を一つ一つ外していくのは簡単な作業ではない。社会通念が自我の中に深く入り込んでいるからだ。多くの人は、社会通念が社会から植え付けられたものではなく自分自身でたどり着いた信念だと勘違いしている。そして社会通念が、自分の可能性を社会通念の枠の中に押しとどめようとする。

そういう人にこの本「人生の目的の見つけ方」をお勧めしたい。著者の勝屋久さんは僕の友人だが、友人だという事実を差し引いても非常に価値のある本だと思う。

勝屋さんは長年勤めたIBMをリストラされ、苦悩の中で自分の本質とつながり、好きなことをして、所得もサラリーマン時代を大きく上回るようになった。そのすべての過程が詳細に記されている。繊細で複雑な感情や感覚の推移の言語化に、見事に成功している。

リストラされた人、転職を迫られている人、独立しなければならない人。そうした人生の転機を迎える人が今後増えてくるのだと思う。そうした人にはぜひ読んでもらいたい。

また冒頭に書いたように、自分の本質とつながることは、AI時代の最重要スキルになる。なので若い世代にも読んでもらいたい。

この本に書かれていることは、世の中の多くの自己啓発本の真逆の内容だ。今世の中は「深く考えて行動するのが正しい」という主張が主流だ。しかし深く考えるのはAIの得意領域。人間は「頭の中の思考」と「心の欲求」との違いを認識し、心の声を聞くべきだと思う。そうすることで、一人一人が唯一無二の形での自己実現を達成できるのだと思う。

僕は、勝屋さんのような生き方をする人が今後主流になっていくと思う。AIを使うのかAIに使われるのかの差は、自分の人生を生きるかどうかにある。ある意味、大きな価値観変化が起ころうとしているのだと思う。21世紀の最大の社会変化は、この価値観変化なのではないかと思う。

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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