脳への刺激で運動能力を高めるヘッドホン、Halo Sport

AI新聞

「1回のトレーニングで3回分の効果があるように思う」。元米海軍特殊部隊コマンダーのMark Divine氏はそう絶賛する。脳への刺激で運動能力を高めるヘッドホンHalo Sportを開発したHalo Neuroscience社によると、このヘッドホンは反復練習で脳が学習する際の効果を高め、アスリート以外にも音楽家や一般消費者の身体的学習にも効果があるという。現在、クリスマスキャンペーンで同社サイト上で299ドルで販売中。

同社のサイトによると、このヘッドホンは脳の運動皮質に少量の電気刺激を与えることで、脳をハイパー・プラスティシティ(超可塑性)と呼ばれる状態にさせるという。可塑性とは変更が可能という意味。人間の脳は子供のときに回路が形成されれれば大人になると変更できないと考えられていたが、10年ほど前から変更可能だということが分かってきている。同社によると、このヘッドホンを20分ほど装着すれば、脳の回路が比較的簡単に組み変わる状態になるらしい。その状態で身体的な反復練習すれば、普段より少ない回数での学習が可能になるという。下の動画は水泳のJamal Hill選手のHalo 体験談。コーチが「驚きだ。結果がすべて物語ってくれている。それを証明できるデータもある。大会で6秒もタイムを縮めた。こんなの聞いたことがない。ショッキングでさえある」と語っている。

同社は、15年以上のリサーチと実験、4000人以上の研究者による審査を行なっており、安全性と効果を確認しているとしている。同社のサイトに掲載されている参考文献には次のようなものがある。スプリント・サイクリングのパフォーマンスが17%向上ランニングの忍耐力が15%向上ピアノの練習で速度と正確さが30%向上3万2000回以上のセッションでも重度な副作用なしジャンプ力が11%z増加問題解決能力が25%アップ一度に複数の仕事をこなす能力が28%アップ医学生の外科手術スキルが30%アップ姿勢が5%改善手の器用さが10%アップ、など。

米frontiers誌のTranscranial Direct Current Stimulation and Sports Performanceという記事によると、「電気刺激は50年以上も研究されてきており、効果は人や行為にもよるが、電気刺激は身体能力を高める可能性を持つと断言しても問題があるとは言えない」と、かなり周りくどい言い方ながらも、効果を認めている。ただ実験室の中での安全性は認められているものの、健常者が長期間に渡って繰り返し使用することの安全性はまだ確立していないと警告している。またスポーツ選手が使用する上での倫理的、法律的な意味について議論があることも紹介している。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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