「独禁法の調査を受けなければマイクロソフトはスマホでも一人勝ちだったはず」ビル・ゲイツ氏

AI新聞

Bill Gates says people would be using Windows Mobile if not for the Microsoft antitrust caseという記事を読んで。

これは本当にそう思う。独禁法調査でクロと判定されれば、最悪のケースとして会社の分断が命じられる。会社分断を避けるため、企業は司法省の言いなりになるしかない。

米マイクロソフトに対する独禁法調査は1998年から2010年までの行われ、会社分断にはならなかったものの、圧倒的シェアを持つウィンドウズの影響力を利用した事業展開に、いろいろと手かせ足かせがかかった。

当時マイクロソフト社内で独禁法調査の対応役をしていたネットフリックスのRich Barton氏は「(調査への対応は)非常に厳しく、まったく楽しくない体験だった」と語っている。

もしマイクロソフトが独禁法調査の対象になっていなかったら、同社のモバイル展開はどのようなものになっていただろう。恐らくマイクロソフトは、同社のスマートフォン「ウィンドウズモバイル」に、ワードやエクセルといった同社の人気ソフトと完璧に同期、連携するアプリを搭載していたことだろう。同時にAndroid向けやiPhone向けには機能が劣るアプリを提供していたかもしれない。そうするだけで、ほとんどのビジネスパーソンはウィンドウズモバイルのユーザーになっていたことだと思う。

それほど純正品同士の連携は魅力的だと思う。比較的高価であるにもかかわらず僕がiPhoneを使い続けるのは、やはりApple製品間の連携が優れているからだ。最初のころはサードパーティのクラウドストレージ、ノートアプリを使っていたが、今ではAppleが提供するiCloud、メモに乗り換えた。Apple Watchを身に付けた状態でiMacの前に座ればiMacのロックが解錠するし、自動車を運転中にApple WatchをタッチするだけでiPhoneを通じて車内スピーカーに流れている音楽の再生を停止できる。純正品ならではの連携のスムーズさに、サードパーティ製品はなかなか勝てないのだと思う。

そう考えれば、ウィンドウズが圧倒的な強さを誇っていた状態でマイクロソフトが完璧な形でウィンドウズモバイルを連携させれば、ウィンドウズモバイルもかなりのシェアになっていたことは間違いない。

それぐらい独禁法調査の影響力は強いといくことだ。

今またGoogle、Facebook、Apple、Amazonなどのテック大手に対して独禁法調査が始まろうとしているが、これでこれらテック大手の動きが鈍化する可能性は十分にあると思う。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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