國光宏尚氏が切り開くVR産業の未来

AI新聞

國光宏尚が描く新たな経済圏「オアシス構想」とは何か、という記事を読んで。

株式会社gumiの創業者、國光宏尚氏は、僕が日本で最も尊敬するビジョナリーの一人だ。テクノロジービジネスの未来を見通せるだけでなく、その未来の状況の言語化にも長けているので、僕自身これまで何度も彼を取材させてもらってきた。どれだけ正確に未来を見通せるかというと、まだTwitterもLINEもなく、SNSという音葉さえなかったころに、國光氏はSNS的なサービスの構想を持っていた。その頃の同氏は経営者としてはまだ駆け出しで、未来を見通せても、構想を実現するだけの資金力も経験値もなかった。彼にとって時期尚早だったのかもしれない。

そんな彼が、これから来る未来について思いのたけを語っているのがこの記事だ。インタビュー形式で書かれているが、言い回しからして、これはインタビューの文字起こしではなく、國光氏自身が書き下ろした原稿ではないかと思う。

この記事で國光氏は、未来予測を言語化しているだけでなく、その未来を自らが作り出すと宣言している。

内容は、仮想空間の中で別人格を楽しむことが一般的になり、仮想空間の中に経済圏ができるというものだ。同じような未来予測は、デジタルハリウッドの杉山知之学長などが何十年も前から語っているし、10年ほど前にセカンドライフという仮想空間が流行ったときも、同様の未来予測が話題になった。

そうした未来予想と國光氏の構想が大きく異なるのは、同氏がより具体的な道筋を示していることだ。ゲームを入口にして利用者が増え、ブロックチェーン技術をベースにすることで、仮想空間の中で作られた物やサービスが経済的価値を持ち、異なる仮想空間間で価値交換できるようになる。というか、彼自らがそうした未来を作っていくと決意表明しているのが、この記事だ。gumiを東証一部に上場させ、資金力も経験値も手にした今、過去最大の勝負に打って出ようとしているわけだ。

この記事の中で國光氏は触れていないが、いろんな人が自分の好きなアバターになって交流し合うという段階の次に、僕は仮想空間にAIが絡んでくるのではないかと思う。自分以外の登場人物がすべてAIという仮想空間だ。最初に自分が何者で、自分の境遇や主な登場人物との関係性、時代背景を設定すると、あとは何が起こるか分からない。そんな仮想空間が流行るのではないかと思っている。

なぜなら人間は、いろいろな人生を生きることで精神的な成長を望んでいると思うからだ。

物質の時代から心の時代に入ったと言われる。心を豊かにするアプリやサービスが登場し始めたが、VRに関しては瞑想アプリのようなものしかまだ登場していない。

今後VRは、いろいろな仮想空間の中の人生を味わうことで、精神性を向上させるようなアプリが登場してくるのではないかと思う。そこまで行けば、VRは非常に大きな市場になる。國光氏がそうした時代の牽引役になるかもしれない。微力ながら応援したいと思う。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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