米Microsoftは、AI開発の非営利団体OpenAIに対し10億ドル(1080億円)という巨額の出資を行うと発表した。OpenAIは、AIが少数の大企業に牛耳られるのを懸念したイーロン・マスク氏など米シリコンバレーの投資家が、社会全体の共有資産としてAIを開発する目的で設立したAIの研究開発組織。そんな組織が、なぜMicrosoftという大企業から巨額の出資を受けることにしたのだろうか。
OpenAIは、マスク氏やPeter Thiel氏などのシリコンバレーの著名人が10億ドル以上を集めて2015年に設立された。GoogleやFacebook、Microsoftなどといった少数の大企業が開発するAIに対抗するのが、当初の目的だったはずだ。
ところが今回の発表を見てみると、Microsoftが10億ドルを出資する見返りとして、OpenAIは今後MicrosoftのクラウドコンピューティングサービスであるAzure上でAIの開発と運用を行うほか、出資額の100倍の金額までMicrosoftがOpenAIの開発したAIから利益を受けることができるという契約になっているという。OpenAIが、「仮想敵」であったMicrosoftの「手下」になったような形だ。
なぜこのようなことが起こったんだろう。発起人であるイーロン・マスク氏はどうしているのだろう、と調べてみると、理事会との意見の相違を理由に昨年中に理事を退任していた。またOpenAI自体は非営利のままだが、営利目的の下部組織を発足させたようだ。
世界最先端のAI開発にはお金がかかる。「社会全体の共有資産」開発という志だけでは、最先端AIは開発できないということなのかもしれない。