日本はもはやロボット大国ではない!?論文数で7位に転落

AI新聞

ロボットは日本のお家芸だと言われる。これから日本の産業界を牽引するのはAIxロボティクスの領域しかない、とも言われる。ところがロボット工学の世界的なカンファレンスに提出された論文数で見る限り、日本の地位が低下し始めていることが分かった。

 

ロボティクスの分野で世界的に最も権威があるカンファレンスの一つInternational Conference on Robotics and Automation。今年は5月にカナダのモントリオールで開催されたが、このカンファレンスに提出された論文を国別に見ると、論文数で日本は初めて7位に転落した。

 

早稲田大学の尾形哲也教授によると、十数年前には論文数で日本と米国がツートップだった。過去は、確かに日本はロボット大国だったわけだ。

 

ところが近年、ドイツが順位を伸ばし、日本は3位に転落。2018年にはさらに中国が台頭し、日本は4位に落ちた。そして今年は英国やスイスなどが急浮上し、日本はついに7位にまで下落した。

 

「日本の研究者がサボってるわけではないんです。世界的に見て研究者の数が増えたんです」と同教授は解説する。このカンファレンス、数年前には参加者数が2000人を切っていた。それが今年は倍以上の4145人が参加。それに合わせて論文数も急増し、相対的に日本人の論文数の割合が低下したのだという。

 

それだけ世界的に見て、この領域に研究者の注目が集まり、競争が激化しているということだ。

 

とはいうものの、日本はロボットのハードウェアの部分で今だに存在感があるという。「メカに関する論文では、日本が世界をリードしています」と同教授は言う。

 

ところが最近の研究のトレンドは、ロボットに搭載するソフトウエアの部分。特に機械学習、ディープラーニングなどが、注目領域だ。事実、今年の最優秀論文のファイナリストは、3本とも機械学習に関するものだった。「そして今後注目される領域も、やはりディープラーニングになる」(同教授)という。

 

残念ながら日本は、ロボットxディープラーニングの領域で特に優位に立っているわけではない。日本には、この領域に詳しい研究者がまだ圧倒的に少ないという。この領域に圧倒的な支援を行なっている中国と違って、日本は公的な支援が少ない。「危機感を持つべきかも知れないが、すぐにはどうしようもない」と同教授は語っている。

 

ただ日本の民間企業が軒並みこの領域に参入し、国際的な展示会などにも出展し始めた。それは望みの一つかもしれない。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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