AIを脳の一部と捉える時代の新たな学習方法

AI新聞

学びを加速し、同じ意志を持つ仲間にも出会える。「自分をAI化する」これからの学習法とは?という記事を読んで。

「学習」というと、自分が学んで賢くなること、というのがこれまでの一般的な定義。しかしこの記事の中で石山洸さんは「AIとともに賢くなる」という意味で「学習」という言葉を使っている。

人間の学びは、ツールによって形が変わる。例えば、紙は思考の断片を書き留めることができる。ワープロを使えば、前後の段落を自由に入れ替えることができるようになった。僕自身、ワープロで原稿を書くようになってから、どういう順番で話を展開すればより分かりやすいかを試行錯誤し、多くを学んできたと思う。

そして今、「機械学習」と呼ばれるようにコンピューター自身が学習するようになってきた。ツールも学習し、その学習結果を使って人間がさらに学習する。人間の学びに、AIが不可欠になってきているわけだ。

具体的にどのような形で人間とAIはともに学んでいくのか。石山さんは「守破離」という言葉で説明する。守破離とは、武道や伝統芸能などの世界で使われる言葉で、学びの段階を示したもの。「守」は、師の教えを忠実に守る段階。「破」は、他の師の教えも学ぶ段階。「離」は独自のものを生み出す段階。そういう意味だ。

AIとの学習における「守破離」を石山さんは、次のように定義している。

「守」は自分が能力を身につけること。「破」はその能力をAI化すること。そして、「離」はそのAIをみんなにシェアすることです。その後、また「守」に戻り、このループを繰り返すことで、「自分」と「AI」と「AIをシェアした人」の3者が共進化することを、AI時代の学習プロセスと呼んでいます。


人間の脳は「クリエイティビティ」「おもいやり」などが得意分野。AIは「持続可能性」「スケーラビリティ」が得意分野。それぞれの得意分野を合わせて、「学習」「共進」していくというイメージだ。

「守破離」の「守」は人間がクリエイティビティやおもいやりを使って仮説を考えるということ。「破」は、AIの「24時間、365日続けられる力」や「人間には分からないような細かな相関関係を見つけ出す力」などを使って、仮説をアプリケーションとして実装すること。「離」はそれをネット上で公開して、だれもが使えるような状態にすること。

簡単に言えば、人間の「この問題を解決したい」という思いを、人間の能力とAIの能力を組み合わせることで解決するようなプログラムにして世に公開する。それで解決できなかったら、またそれを「解決したい」という思いで、AIとともに解決策を練っていく。

その無限ループで、人間もAIもともに学習し能力を向上させることができる。これを石山さんは、「これからの学習」だと言ってるわけだ。

学習を、人間とAIの共同作業として捉えたところが非常におもしろい考え方だと思う。

人間は、元からある脳の外側に新しい脳の層を作ることで進化してきた。最も新しくできた層は、大脳新皮質だ。AIは、そのさらなる外側にできた新しい脳の層なのかもしれない。その外部の脳と肉体の脳の両方を使って、人間はさらに学習し、進化していくのだと思う。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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