「工夫次第で、量子コンピューターの実用化はすぐにも可能」Rigetti社

AI新聞

FastCompayの Quantum computing is almost ready for business, startup saysという記事から。

量子コンピューターの実用化は、まだ10年以上先だとも言われているが、米カリフォルニア州のベンチャー企業Rigetti社は実用化がもうそこまできていると話している。

ベンチャー企業が大風呂敷を広げるのは、よくある話。でもRigetti社がシリコンバレーの名門ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitzの出資を受けていることから、注目する価値があるかもしれない。

Riggetti社は、量子コンピューターのクラウド・コンピューティング・サービスを提供し始めているのだが、量子コンピューターと通常のコンピューターの両方を同じクラウド上で提供しているのが同社の特徴。量子コンピューターは計算が早いが、間違いを犯すことも多い。同社のクラウドでは、量子コンピューターと通常のコンピューターを組み合わせ、量子コンピューターの間違いを通常のコンピューターが探し出し、訂正する仕組みになっている。GoogleIBMといった量子コンピューター研究の大手が完璧な量子コンピューターを作ろうとする中で、Rigetti社は、今ある技術を組み合わせることで量子コンピューターの実用化を先に進めようというわけだ。

同社によると、AIの産業利用の中には完全な正解が必要でない利用方法もあるという。例えば創薬。病気を直すのに最適の化合物の組み合わせを1つ選び出さなくても、十分に有効な化合物の組み合わせを幾つか提案してくれるだけでもいい。どちらにせよ臨床試験などが必要なので、ベストを1つ選出することができなくても、ベターを幾つか選出するだけでも十分な価値があるというわけだ。

金融商品も同じ。最も値上がりが期待できる株の銘柄を1つ選ぶことができなくても、値上がりしそうな銘柄100を選ぶことができれば、その100の銘柄のポートフォリオを組むことで大きな利益を期待できるからだ。

そうした利用方法なら、現状の量子コンピューターと通常のコンピューターの組み合わせでも、ビジネス的価値があるはずだとRigetti社は指摘している。

現状のRigetti社の半導体は16量子ビット。32量子ビット、128量子ビットの半導体の開発を急いでいるという。同社によると、100量子ビットを超えるころから通常のコンピューターよりも量子コンピューターのほうが成果を上げるようになるらしく、「まずは開発者に16量子ビットに慣れてもらい、量子ビット数が高い半導体の時代の幕開けに備えてもらいたい」と話している。同社によると、6カ月から36カ月で量子コンピューターの時代がくるという。

ちなみに現状のGoogleの量子コンピューターは72量子ビット、IBM50量子ビット、インテルは49ビットという。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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