シリコンバレー一極集中に陰り? 中国とブロックチェーンが変えるテック業界勢力図

AI新聞

テクノロジー業界の世界の中心と言えば、米シリコンバレー。ここ何十年かはそれが常識だったし、日本の起業家の中にもシリコンバレーでの起業を目指す人が多かった。ところがここにきて、アジアが世界のテクノロジーのもう1つの中心地になりつつある。この動きの背景には、中国テック企業の大躍進と、アジアでのブロックチェーン市場の急拡大があるようだ。

中国の大躍進については、AI新聞でこれまで何度も取り上げてきた通り。

投資される側で見ると、2017年の世界のAIベンチャーへの投資総額のうち48%を中国のベンチャー企業が獲得。米国のベンチャー企業の獲得総額は38%だった。

投資する側で見れば、TechCrunchによると、2017年の1540億ドルの世界全体の投資総額のうち米国のベンチャーキャピタルや投資家などが投入した金額は、全体の44%だった。米国の投資家にはまだ追いついていないものの、アジアのベンチャーキャピタルや投資家などによる投資総額は40%にも達した。5年前には、アジアの投資家による投資総額は全体の5%以下だったというから、アジアの投資家の力が伸びていることが分かる。

投資の成果も出ているようで、評価額が10億ドル以上のベンチャー企業、いわゆるユニコーンの数は、中国が164社、米国が132社だった。

アジアが仮想通貨やブロックチェーンの世界最大の市場であることも、アジアが世界のテクノロジーの中心地になりつつあるもう1つの理由だ。

マイニングと呼ばれる仮想通貨のデータ検証作業の80%は、中国企業が行なっていると言われているほか、仮想通貨の取り引きの大部分はアジアで行われているという。日本のSBIホールディングスは、ブロックチェーン事業への投資に本腰を入れ始めた。北尾吉孝社長は、仮想通貨事業で世界一を目指すと話している。

CryptoPotatoという仮想通貨の専門メディアの「見逃してはいけない4つのブロックチェーンのイベント」という記事によると、イベントはそれぞれ、ソウル、シンガポール、バンコクなど、アジアの都市で開催される。アジアがブロックチェーン産業の1つの中心になっていることが分かる。

TechCrunchによると、米国のブロックチェーン関連のベンチャー企業の間でも、アジアの土地勘を得るために、アジアの投資家からの出資を受けるところが増えているという。

ブロックチェーンは、いまだ発展途上の技術。期待を裏切って失速するのか、予想を上回る大化けとなるのか、今のところだれも正確に未来を読むことはできない。しかしもし大化けすれば、アジアがテクノロジー集積地に急成長することになるだろう。時代はものすごい速度で変化し続けている。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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