日本企業が見せしめに!?巨額のEUプライバシー法制裁金を課される可能性

AI新聞

ニューヨークタイムズが、アイルランドのデータ保護委員をインタビューしている。

インタビューを受けたのはHelen Dixon氏で、アイルランドのGDPR管轄オフィスのトップの女性だ。GDPRは、欧州プライバシー法GDPRが、コンピューティングのパラダイムシフトを引き起こす可能性という記事に書いた通り、巨額の制裁金で注目を集めているEUのプライバシー保護法だ。クロと認定された場合の制裁金は、企業の世界売上の4%もしくは、最大2,000万ユーロ(約26億円)のいずれか高い方になる。ちなみにもしFacebookがクロと認定された場合、制裁金はなんと1600億円にもなる計算。

アイルランドには、Facebook、Airbnb、Apple、Google、Twitter、Microsoft、LinkedInなどの米IT大手が、ヨーロッパ本社を置いている。なのでニューヨークタイムズは、Dixon氏のことを「テクノロジー業界にとって最重要の行政官」と評している。

この記事によると、Dixon氏のオフィスの予算は750万ユーロ。スタッフ140人にしかいない。来年度には200人への増員を申請中だそうだが、米テック大手が何千人も法務担当者を雇用していることからすれば、あまりにも少人数。

当然ながら世界中の企業を時間をかけて審査することなどできないだろう。ということは目立った何社かだけを取り上げて、見せしめとする可能性がある。

ここ1ヶ月ほど、GoogleやFacebook、Amazonなどの米IT大手から、プライバシーに関する合意書変更のメールが次々と送られてきている。5月25日の施行を前に、米IT大手は、急いでGDPRに準拠しようとしているのだろう。

翻って、日本企業からは同様のメールはまったく届いていない。

どうやら日米の企業間で、GDPRに対する意識の違いはかなり大きそうだ。

もし僕がDGPRの担当官なら、後手に回っている日本企業数社に巨額の制裁金を課して、見せしめにしたいと思うかもしれない。

何社かが見せしめになれば、日本企業は急いでGDPRに準拠しようとするだろう。

それが引きがねとなって、世論がプライバシー重視に傾き、「AIxクラウド」から「AIxブロックチェーン」へのパラダイムシフトが起こる可能性がある。非常に気になるところだ。

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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