「AI冬の時代がやってくる」Filip Piekniewski氏

AI新聞

米のAI研究者のFilip Piekniewski氏が、自身のブログで「AI冬の時代がやってくる」と主張して、話題になっている。

AI冬の時代の到来が間近だとする根拠として、同氏は次のようなことを挙げている。

①ディープラーニングの著名研究者たちのネット上での発言が少なくなった。

例えば、スタンフォード大学のAI研究所の元所長であるAndrew Ng氏のツイッターでの発言が、2016年には1日に0.802回あったのに、2018年はこれまでのところ1日に0.263回のペースでしか投稿していないという。

これは同氏の大げさな主張が専門家によって検証されるようになり、同氏が無責任な発言を控えるようになったのではないか、というのがPiekniewski氏の読みだ。

実際、「レントゲン技師は時代遅れになる」というNg氏のツイートに対して、専門家が「人間のレントゲン技師と比べるとディープラーニングの精度はまだまだ低い」とデータを示して反論している。

②ディープラーニングはスケールしていない

2012年にAlexNetというディープラーニングのモデルが世界中のAI研究者に衝撃を与えたが、そのときのAlexNetのパラメーター数は6000万程度だった。最近のモデルでは、パラメーター数が少なくともその1000倍にもなっている。でも性能が1000倍になっているかというと、そうではない。一部の研究者が主張するほど、ディープラーニングが指数関数的な進化を遂げているわけではない、というのがPiekniewski氏の主張だ。

③自動走行技術は、まだまだ不完全

実際に事故も起こっているし、自動走行技術は、完璧に安全な技術とは言えないのが現状。完璧なレベルにまではなかなか到達できないでいる。イーロン・マスク氏でさえAIの指数関数的な進化を待ちわびている状態だとPiekniewski氏は推測している。

ほかにもいろいろな例を挙げて、ディープラーニングのブームに陰りが出始めている、と同氏は主張している。

で、僕はどう思うのかというと、AIも単なるコンピューティング技術なので、他のテクノロジー同様にハイプ・サイクルというものがあるのだと思う。すばらしいブレークスルーが起これば、だれもがその可能性に驚愕し、ハイプ(バブル)が起こる。ハイプが大きければ大きいほど、進化のペースに幻滅する人が出てきて、バブルが弾ける。

確かにここ1、2年は、AIってバブルの様相を呈している。なのでいったんバブルが弾ける可能性はあると思う。

ただ、だからといって、「冬の時代」に入るのかというと、僕にはよく分からない。僕の知る限り、ディープラーニングって、まだまだ進化を続けているように思うけどなあ。まあバブルに踊らされないように、1つ1つの情報を客観的にウォッチしていきたいとは思っている。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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