ブロックチェーンアプリに向く市場

AI新聞

BlockstackRyan Shea氏の講演から。

ブロックチェーンによる非中央集権型アプリに向く市場として、同氏は次の3つの条件を挙げている。非中央集権型アプリとはどのようなものなのかについては、Blockstackが次のパラダイムをけん引する4つの理由=George Gilder氏をご参照ください。

(1)データロックイン。

事業者がユーザーデータを全部押さえていて、だれとも共有しない場合。

(2)高額のプラットフォーム使用料

これは使用料だけではなく、無駄に広告が多い場合も当てはまる。YouTubeも最近は再生の途中にコマーシャルが流れることが増えてきている。こうした広告に不満を持つ人が増えてくれば、YouTubeに代わる新しいサービスが登場してくるかもしれない。

(3)センサーシップがきびしい

事業者の監視が厳しすぎて自由に活動できなくなると、新しいプラットフォームを望む人が増える、という話。

この3つの条件に当てはなる市場があれば、そこにブロックチェーンベースの非中央集権アプリを投入すべきだと、Shea氏は主張する。

ちなみにBlockstack向けには、次のような非中央集権型アプリが既に開発されているという。

CasaairB&Bの非中央集権版。Ontake Ryouhouは、iTunesの非中央集権版。Open Bazaarは、ヤフオクやメルカリの非中央集権版。Afiaは、非中央集権型の医療データサービス。Guildは、コンテンツの非中央集権型マーケット、だそうだ。

ところがこうしたサービスがShea氏の言うように、先行する中央集権型サービスを打ち負かしているかというと、今のところそんな感じは全くない。将来的にも、どうなのだろう。こうしたサービスが既存プレーヤーを打ち負かすということは、想像しづらい。

新しい技術が出ると、最初は古い技術向けのコンテンツがそのまま登場する、と言われる。テレビが出始めた時のコマーシャルは、マイクの前でアナウンサーが宣伝文を読むというものだった。ラジオのコンテンツをそのままテレビに乗せていたわけだ。今では、ラジオのコマーシャルと、テレビのコマーシャルはまったくの別物。テレビに合ったコマーシャルが登場するまで、しばらく時間がかかったわけだ。

Blockstack向けアプリも、今のところは前のテクノロジー向けのサービスを新しいテクノロジー上で再現している段階なのかもしれない。

果たしてブロックチェーンならではのサービスってどんなものになるんだろうか。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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