メルカリのオウンドメディア「メルミライ」のブロックチェーンに関する記事「メルカリが見る次世代のインターネット」。同社でブロックチェーン事業に携わる3人のエンジニアのインタビュー形式の記事になっている。
個人的に面白かった点をいくつかピックアップ
①スマートダスト
高橋:たとえば、私は「スマートダスト」という表現で考えている未来があります。スマートダストは、町中に塵のようにセンサーデバイスが散らばっている世界です。そのセンサーによって、世の中の物質や動きを感知することができれば、それをVR上に再現できます。つまり、現実をVR上で再現できます。
そして、VR上では、あらゆるものをブロックチェーンで管理できるので、現実で起こっていることをブロックチェーンを通じて管理できるようになります。
現実社会に存在するようなもの、例えば机とか鉛筆とかには、利用履歴や利用契約書などのデータを添付することはできないけれど、そうした机や鉛筆をそっくりそのままVRの空間に再現すれば、それぞれの物体に履歴や契約書などのメタデータを貼り付けることが可能。「この鉛筆は〇〇さんの所有物だけど、〇〇さんに貸している」などということをVR空間上で記録できるわけだ。例えば貸し自転車のサービスなんかでも、自転車にだれの所有物で、だれがレンタル中か、などと記載していなくても、VRメガネをかければ、そういった情報が一目瞭然になる。「現実をブロックチェーンで管理できる」わけだ。
②安全は非中央集権、安心は中央集権
曾川:ブロックチェーンが普及しても、必ずしもすべてのものが非中央集権になるとは限りません。 安全は非中央集権ですが、安心は中央集権に宿るのです。
ブロックチェーンって技術的にはデータを分散できるんだけど、それを管理する企業や組織の存在を認めることも、認めないこともできる。大手企業や国が管理者になれば、ちょっと心配。権力を乱用するかもしれないから。
でも何かあったときに企業や国が責任を取ってくれるとうれしいかも。
「安全は非中央集権、安心は中央集権」て、うまい表現だなあ。
曾川:ビットコインのマイニングができるくらいの電気代の安さとASICの開発技術があれば、今は解決できていない他の問題も解けるようになるでしょう。そう考えると、このマイニングができるインフラや技術を持っている国や地域が次の時代の覇者となります。
これはどういう意味なのか、僕はよく分からない。すべての物体をブロックチェーンで管理することで、「今は解決できない問題も解けるようになる」ということなのかな。
③ビットコインがAIを進化させる?
高橋:また、マイニングをしない時に生まれるコンピュータリソースは別のことに転用できますよね。たとえば、機械学習やディープラーニングなど。そう考えると、ビットコインによって生じたイノベーションは、他の産業の発展もすすめるかもしれません。
マイニングとは、だれも不正していないかを検証するための計算処理など、ブロックチェーンの仕組みを支える計算処理のこと。そのマイニングに膨大な数のコンピューターと電気代が必要になる。これからブロックチェーンが社会のインフラになる中で、日本でもマイニングできるだけのコンピューターは必要になるんだと思う。そういうコンピューターのインフラが一旦できてしまえば、マイニングに使っていないときに別の計算に利用できるようになるんじゃないかって話。そのコンピューターインフラを使って、AIがさらに進化するのではないかという主張だ。確かにそうかもね。
濱田:つまり、ビットコインのマイニングのお陰で、色々なテクノロジーが前進するということです。
3人がこの点に同意している。ブロックチェーンが社会インフラになると3人ともに考えているということだ。そんな風に考えたことはなかったけど、その可能性があるかもしれない。特に①のスマートダストのようなことが実際に起これば、ブロックチェーンは社会インフラになる。そしてその社会インフラを使ってAIなどのテクノロジーが進化するかも。おもしろい意見だなあ。
④ブロックチェーンは新しいインターネット、価値のインターネット
濱田:ただ、Web3.0という表現は、正確にいえば「インターネット2.0」の方が適切でしょうね。
曾川:確かに。Webというとドキュメントの話なのですが、ブロックチェーンは、いわばインターネットのオーバーレイ技術なのです。しかもピア・ツー・ピアの。そういう点では、Web3.0というよりも、インターネット2.0の方が表現としては正しいかもしれません。
ーインターネット2.0の世界で、今と大きく異なる点はどのようなところでしょうか
濱田:「オンライン上で価値を自由に送ることができるようになる」という点が重要です。インターネット1.0は情報を送ることができたけど、次は価値ですよね。
これがブロックチェーンの最大のポイント。では具体的にどんなことができるのか。
濱田:信用情報が積み重なり、それが可視化されることによって、様々な場面で与信の活用ができます。たとえば、引っ越しの時に人によっては敷金がいらなくなるといったことが起こるかもしれません。
高橋:他には、デジタルの情報にきちっと価値がつくと思います。電子書籍やグラフィックにしろ、今のデジタルコンテンツはコピーができてしまいます。しかし、ブロックチェーンで、それらの存在できる個数を管理できれば、コンテンツの価値はあがります。
濱田:また、ブロックチェーンによる台帳があれば、物の評価や権利の移転もしやすくなるでしょう。今は不動産を売るのは大変です。瑕疵を評価したり、契約も数多く対応する必要があります。
曾川:確かに不動産の売買は、手続きがめんどくさいですよね、もし不動産を買うのが簡単になったら、買うは人もっと増えるのではないでしょうか。もっといえば、例えば「2年分だけ家を買う」といったことができると、もっと生きやすいですよね。
濱田:車もそうでしょうね。
高橋:車の車検の履歴はまさにブロックチェーンの台帳と親和性がありますよね。最初のオーナーがいて、次に誰がいて、という情報が可視化されると、人は車を買いやすくなります。
ー「情報は出したくない」という人もでてきそうです濱田:情報を出さないという人は信頼が無くなっていくでしょう。「情報出していないというのは、やましいことがあるんだ」と思われるようになります。
ーそう考えると「善い人」が求められる社会になっていくのでしょうか。中国では、信用情報を蓄積するサービスが増えてきており、その影響で、「ちゃんとしなきゃ」と思う人が増え、社会のマナーがよくなったという話も聞きますが
濱田:「悪い人が減る」という可能性はあります。
この可能性は確かにありそう。僕のこれまでの人生で、詐欺のような悪いことをした人間にも何人か出会ってきたけど、「あいつら、今何しているんだろう」と思ってネットで検索しても、まったく出てこない。Facebookアカウントも持っていない。
僕自身、「ネットに情報がない人は、信用できない」という感覚が確かにある。社会にいい人が増えていくのはうれしいなあ。でもその分、欲望が抑圧されて、陰で悪いことをする人が増えるかも。
⑤ブロックチェーンベースの検索エンジンでGoogleを超える
ーインターネット2.0のキラーアプリはどのようなものが考えられますか
曾川:DLTに基づく検索エンジンは生まれてくるでしょう。著作権管理とリンク・被リンクを活用した検索エンジンです。そもそも論文や特許、法律などは、ブロックチェーンに載せやすいものです。そして、それらで構成されたネットワークができたら、それを検索するものが次世代のGoogleになるかもしれません。
2016年、情報が不確かな医療のキュレーションサイトがGoogleで上位表示されたことが社会問題になりました。これは、不正確な情報がGoogleでは高く評価されたとも言えます。そう考えると、この事件は今の検索エンジンに課題があることを証明したともいえます。
もし、ブロックチェーンで、記事で使われていた情報のソースをしっかりトラッキングできていると、信頼できる情報だけで集めたキュレーションメディアができるかもしれません。そのサイトの情報は今よりは信頼できるでしょう。
Google検索は簡単に言ってしまうと、どのページにより多くリンクされているのかをベースにリストアップする順番を決めている。登場当初は画期的な発想だったし、実際に有益な情報が先に表示される傾向があった。なのでGoogleは一気に普及し、大企業になった。
でもその裏をかいて、ダミーページをいっぱい作って、そこからリンクを貼るような輩が出てきた。そろそろ新しい考え方の検索エンジンが必要になってきているのかも。確かにブロックチェーンをベースにした検索エンジンって、おもしろそうな考え方だと思う。
⑥オウンドメディアっていいかも
メルカリのオウンドメディアが書いたブロックチェーンの記事。なかなかいい記事書くなあ。従来型メディアには公平性という長所があるけど、オウンドメディアはより専門的で正確な記事を書くというメリットがある。僕もこの「AI新聞」というメディアが株式会社エクサウィザーズ のオウンドメディアであることで、専門的なことを周りの技術者に質問できるというメリットがある。そのメリットがほしくて、この仕事のオファーを受けたということろがある。
従来型メディア、オウンドメディア、どっちもそれぞれのよさがあるんだね。
僕もAI新聞頑張ろうっと。