医療データをブロックチェーンで守れ=米MedRec

AI新聞

電子カルテの重要性が指摘されるようになって、もう何年たってるだろう。医療の世界ってまだまだデジタル化されていないし、されていたとしても互換性がなかったりする。匿名化した患者のデータを大量に集めて機械学習にかければ、人間では気づかないようなデータ間の相関性が明らかになり、医療が大きく前進すると思うんだけどなあ。

やはり問題は、データ漏えいしないか、匿名性が守られるか、などといったことだと思う。

それならブロックチェーン技術が使えるかも。

ブロックチェーンは、暗号化した分散型の台帳でデータを安全に管理する技術。誰もがアクセスできる共有された台帳が、ネットワーク上に広く拡散しているので、チェーンのなかのひとつのブロックをハッキングするには、同時にそのチェーンの履歴上にあるすべてのブロックをハッキングしなければならない。

そう思って調べてみたら、米国で既に医療データをブロックチェーンで保護しているベンチャーがあった。MedRec社という名前のベンチャーで、ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センターとMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが共同で基礎技術を開発したらしい。

Wired誌がMedRecの可能性を次のように表現している。

EHRの場合は、受診時のあらゆる出来事(血液検査、新しい処方箋、レントゲン撮影などの情報)がトランザクションとして記録されるだろう。

そしてそのトランザクションを、アクセスキーを預けられた人(つまり医者や薬剤師といった人々)が認証する。それから、認証された各ブロックにソフトウェアがタイムスタンプを押し、古いブロックのチェーンに追加して年代順に並べる。そのようにしてできた履歴は、ビットコインの販売であれ、人工膝関節の処置であれ、その台帳の歴史のなかで行われたすべてのトランザクションを示している。

(中略)単純な例として処方箋を挙げる。アスピリンの服用を示すある患者の医療記録があるとする。その患者の別の記録では、タイレノールを飲んでいると示されている。そしてまた別の記録では、モトリンとリピトールを服用、とあるかもしれない。現在のEHRでは、こうした一つひとつが単独で存在しているという問題があり、患者がいま何を服用しているのか、医者が知りえないこともありうる。

しかしブロックチェーンを使えば、各処方箋は“預金”のようなものだ。医者が投薬を停止するときに、その預金は引き出される。ブロックチェーンを使えば、医者はすべての預金と引き出しの記録を確認する必要はなく、単に残高を見ればいい。

そして病院や薬局は、データを見るために、互いにデータの送信を繰り返す必要はなく、共通の同じ台帳を見ればいい。患者のプライヴァシーとセキュリティーにとって、これは大きな意味をもつ。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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