AIをGoogleだけのものにさせるな。AIxブロックチェーンで分散化プロジェクト続々

AI新聞

AIは先手必勝、大手テック企業に有利な技術だ。このままではGoogle、Amazon、Microsoftなどのテック大手が、AIを動かすためのデータ、コンピューティングパワー、アルゴリズムを独占しかねない。そうはさせじと、AI分散化プロジェクトが次々と立ち上がっている。キーとなる技術は、ブロックチェーン。AIをブロックチェーン上に載せることで、テクノロジー業界の勢力図を塗り替えることができるのだろうか。

ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨の基盤となっている技術で、世界中に存在するコンピューターを使って処理を分散し、改ざんできない仕組みになっている。この分散処理と改ざん不可能な仕組みを使って、AIを動かそうという考え方だ。

AIに必要なものは①データ、②コンピューティングパワー、③アルゴリズムの3つ。Forbesの「AI Will Take Over Blockchain In 2018, But It Won’t Happen Without These 3 Key Areas」という記事によると、この3つを、それぞれブロックチェーン上に乗せてしまおう、という動きが始まっている。

①データ

AIは学習用のデータがなければ賢くならない。Google、Amazonなどのテック大手は大量のデータを持っているため、他社には追いつけないほどにAIを進化させることができる。当然テック大手は、自分たちが持つデータを他社に公開するつもりはない。

テック大手以外の大多数の企業には困った話だ。そこでデータを持っている企業同士で、データ取引所を作ろうという動きが起こっている。ただセキュリティーやプライバシーの問題から、企業間のデータ売買はほとんど行われていないのが現状だ。

それならばブロックチェーンを使って、データを安全に取り扱えるようにしようというのがOcean Protocolと呼ばれるプロジェクトの狙いだ。

特定の業界向けのデータ取引所も登場した。DX Networkは、企業、投資家、業界ニュースなどの構造化されたデータをブロックチェーンを使って、交換する仕組みのようだ。

IoTデバイスのデータを取り扱うIoTeXという取引所も登場している。

 ②コンピューティングパワー

複数の企業から入手したデータを統合してAIに学習させるためには、大量のコンピューティングパワーが必要。Golemは、企業同士の余剰コンピューティングパワーを売買できるマーケットプレースだ。

③アルゴリズム

複数のソースから入手したデータを複数のコンピューターを使ってAIに学習させるのであれば、AIのアルゴリズム自体も分散処理が可能なほうがいい。そこでアルゴリズムをブロックチェーンで包み込んで、分散処理を可能にするプロジェクトが幾つか進んでいる。

SingularityNETは、そうしたプロジェクトの1つで、アルゴリズム同士のコミュニケーションを可能にしている。Deep Brain Chainは、稼働していないGPUを利用して、アルゴリズムを動かすことのできる仕組みだ。Cortexは、独自のブロックチェーンのインフラを構築。ユーザーはそのインフラ上で機械学習のプログラムを書くことができる。自分で書いたプログラムに、スマート契約書をつけることで、契約書に従ってプログラム同士が共同作業を進めることが可能になるという。

Google、Amazon、Microsoftなどのテック大手が大量のデータを持っているとはいっても、世の中全体のデータ量から見ればほんの一部。いずれ、こうしたデータ、コンピューティングパワー、アルゴリズム交換の仕組みが不可欠になるはず。その基幹技術としてブロックチェーンはかなり有望だと思う。果たしてブロックチェーンがそのAIのインフラとなるのだろうか。要注目領域の1つだ。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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