就活学生はAI審査に反対

AI新聞

GIZMODOの「採用選考にAIを導入。就活学生からは反対の声」という記事によると、「書類選考の合否決定をAIが行うのをどう思うか」という質問では、就活学生の50.1%が反対。面接をAIが判定するという質問では、67.5%が「よいと思わない」と答えたのだとか。

この記事の記者は「そりゃそうですよ。(AIが公平だとしても)人間に判断してほしいもの」「人間面接官のちょっとした不公平や気まぐれを、人は縁と呼ぶのでしょう」と評している。

え~、そうなのかなあ。

僕自身は、人生って縁でできていると思っているので、この記者の言うことも分かるんだけど、でもそうした考えがめちゃくちゃ少数派であることも知ってる。

長年受験勉強をがんばってきて「試験官の気まぐれ」で不合格になって「それも縁」と割り切れる人が何人いるだろうか。圧倒的多数の人が、「気まぐれ」ではなく「公平な」ジャッジを求めているのだと思う。

ではなぜ就活学生の多数派が、AIの選考に反対意見なのだろうか。

AI面接に反対なのは、学生の多くが、AIに公平な判断は無理と考えているからではないだろうか。そう考える学生の意見は正しい。

書類選考とは異なり、面接はデータや点数にしにくい情報を取得するのが目的。しゃべり方から性格や熱意などを汲み取りたいというのが面接官の思いだろう。そうしたデータ化しずらい情報は、当然ながらAIは扱えない。どれだけ優れたAIでも、データがなければ判断のしようがないからだ。

一方、書類審査ではAIを利用するほうが圧倒的に公平だと思う。表立って公表していないが大手企業の面接官は、応募者全員の書類に目を通しているわけではない。少なくとも僕の知り合いの大企業のリクルーティング担当者は、「ここだけの話」ということで、大学名で足切りしている事実を語ってくれた。ひどい話だが、これが現実だと思う。何万通という応募書類を、人間がすべて目を通せるわけがない。

大学名がすべて。このことは公然の秘密なんだと思う。なので、いい大学に行かせようと親は躍起になるわけだし、大学に入ってしまえば後はろくに勉強しない学生が多くいるのだと思う。

ほんとにひどい現実だと思う。こうしたひどい現実よりも、AIが書類審査してくれるほうが絶対にいいはず。これは議論の余地がない話だ。

もちろん人間が書類も丁寧に選考してくれるのなら、そのほうがいい。しかしそうしてくれないのなら、書類を見ずに捨てられるより、AIであれ選考してくれるほうがありがたい。

学生の50.1%がAIによる書類選考に反対なのは、大学名で足切りされていることを知らないのか、AIが書類選考できるまで進化していることを知らないか。そのどちらかだと思う。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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