AIエンジニアは、お金で動く?やりがいで動く?

AI新聞

AI研究者やエンジニアの給料が高騰しているらしい。CBInsightsによると、BMWの中国支社は機械学習の研究者を56USドルから62USドルで募集している。日本円で言うと年収6000万円から7000万円ぐらいだ。中国のほかの企業でも機械学習のエンジニアを31USドルから41USドルで募集中という。

米国では求人サイトGlassdoorで「人工知能」と検索すると、3万2000件の求人がヒットする。どれも年収何千万というものだという。

中国テンセント(騰訊)の調べによると、学生を含めてAI関連の研究者は世界中に推定30万人はいるが、企業が必要としているAI専門家は100万人以上と推計されている。まったく供給が追いついていない状態だ。ここまで需要と供給の間に格差があれば、当然給料は高騰する。

ただ僕が取材した米国の研究者によると、AI研究者は必ずしも給料の額で仕事を選ぶのではなさそうだ。

例えば著名AI研究者のOren Etzioni氏に、企業がAI研究所を運営する上で最も大事なことは何なのかを聞いたところ、同氏は「トップにだれを連れてくるかだ」と即答した。某中国企業のAI研究所がトップに著名研究者を採用したところ、その研究者の下で働きたい優秀なアメリカ人の若手研究者が続々集まってきたという。

また日本のリクルートが、著名AI研究者数人をアドバイザーに迎えることに成功したが、うち4人を取材したことがある。彼らにリクルートのアドバイザーになった理由を聞いたところ、全員がリクルートが持つ多彩な事業のデータに惹かれたと答えた。うち一人は「いろいろな異なるデータから相関関係を探し出すのが今、一番したい研究。リクルートからのオファーは、受けなければ後で後悔するレベルの話だと思った」と語っていた。

つまり若手研究者は、著名研究者に惹かれ、著名研究者はデータに惹かれるのだと思う。もちろん魅力的なデータを持っていなかったり、他社とそう変わらないデータしか持っていない企業は、高額な年棒で研究者を引きつけるしかないのかもしれないけれど。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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