中国が‘独自のNFTインフラ Web3で世界先行を目指す

AI新聞

中国の政府関連団体が、暗号通貨を使わない中国版NFT(非代替性トークン)のインフラをリリースした。あらゆる証明書にNFTを利用していくとしており、世界に先駆けてインターネットの新時代に突入しようという考えだ。

 

NFTは、アート作品の所有者を証明することなどに使われる技術で、昨年ぐらいからNFTを使ったアート作品などの値段が高騰していることで話題になっている。

 

NFTの売買は通常、暗号通貨を使って行われるが、中国では暗号通貨を禁止しているため、暗号通貨を使わないNFTを開発したという。

 

技術的に言うと、イーサリアムなどのオープンなブロックチェーンから派生させた10のオープンでパーミッション型のブロックチェーンを使ったもので、ミント代(発行料金)は0.7米セントと格安で、ガス代(手数料)は人民元で支払う。

 

一般的なNFTと区別する意味で、NFTとは呼ばずに、DDC(非中央集権デジタル証明書)という名称を採用している。

 

中国版NFTを発行、管理するためのインフラを開発したのは、中国の国家信息中心(State Information Center)のプロジェクトBlockchain-based Service Network(BSN)で、中国版NFTのインフラ上では、中国版NFTを作成、管理できるポータルやアプリを開発できるという。

 

BSNの事務局長のYifan He氏は「今後中国ではあらゆる証明書や口座管理にDDC(中国版NFT)が利用され、年間何十億件ものDDC(中国版NFT)が発行されることになるだろう」と語っている。

 

BSNのサイトによると、一般的なNFTは詐欺やマネーロンダリングなどに使われる可能性があり、各国政府の法規制の方向性が決まっていないことや、投機マネーが高騰した市場が暴落する可能性があることなどを理由に「98%のNFTプロジェクトは失敗に終わるだろう」としている。一方で中国版NFTは、登録制なので安全だとしている。BSNでは今後、中国だけでなく世界中で中国製NFTを利用可能にしていくとしている。

 

元CIAアナリストYay J. Fanusie氏によると、中国政府がブロックチェーンやNFTなどの最新技術の活用に積極的に乗り出す理由は3つ。1つは、デジタルインフラを整備しデジタル経済を発展させること。2つ目は、非中央集権の技術が広く普及する前に、ある程度のコントロールでできるようにしておくこと。3つ目は、世界のデジタル経済の中での競争力をつけるため、としている。

 

NFTは、Web3と呼ばれる新しいインターネットの技術潮流の中核技術の1つ。Web3は、インターネットの次のパラダイムだと言われており、中国には、新しいパラダイムを米国に先んじてリードしたいという思惑があるようだ。

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

  • Home
  • AI新聞
  • 中国が‘独自のNFTインフラ Web3で世界先行を目指す

この機能は有料会員限定です。
ご契約見直しについては事務局にお問い合わせください。

関連記事

記事一覧を見る