Harvard Business ReviewのDigital Leadership is not an optional part of being a CEOという記事を読んで。
最近DXに関する英語の書物をいろいろと読み始めたんだけど、その中でこのハーバード・レビューの記事を大きく取り上げている本があったので、直接の記事にアクセスしてみた。
記事の見出しを日本語にすると、「社長にとってデジタルでリーダーシップを取ることはオプションじゃない。マストだ」という感じ。著者はBerlin by Deloitte社のJosh Bersin氏。
2016年12月の記事なんで、ちょっと古い記事。だけど最近出た本の中でも紹介されているということは、この記事の主張が今日のデジタル・トランスフォーメーションの考え方の根幹にあるのかもしれない。ということで、簡単に紹介してみたい。
マサチューセッツ工科大学と一緒に131カ国、27業種の1000人以上のCEOをインタビューしたところ、90%のCEOが「自分たちのビジネス領域が、デジタルのビジネスモデルによって劇的に変化し、再定義されようとしている」と答えた。また70%が「その変化に対応するためのスキル、リーダー、組織を持っていない」と答えたという。
この記事が出てから欧米の企業はどう変化したのかは分からないが、少なくとも日本企業の多くは、この記事が出た当初と同じ問題意識をいまだに持っているように思う。
ではCEOは何をすべきか?Chief Digital Officerを雇うべき?インターネット企業の元経営者を重役にすべき?社員全員に、デジタルのビジネスモデルのセミナーを受講させるべき?
この著者によると、「デジタルで何かをする」というだけでは不十分で、「デジタルの状態になる」必要があるという。「Do デジタル」ではなく「Be デジタル」になる必要があるということだ。
Beデジタルって、どんな状態なんだろう。ある大手メディア企業は、組織を地域ごとの小さなビジネス部署に分割。それぞれの部署ごとに人の採用、製品の販売、顧客関係の権限を持たせたという。トップダウンの中央集権ではなく、権力を分散させたわけだ。
そうした小さな部署を束ねるのが、スマートフォンのアプリ。このアプリが会社の情報プラットフォームになり、経営陣は、各部署の人事動向や従業員の満足度、顧客の満足度などを、このアプリ上でリアルタイムに確認できるようになった。
また各部署には起業経験のある人材を外部から採用し、商品のプロモーションからマーケティングのイベントまで自由に計画できるようにしたという。
一方で経営陣の仕事は、こうしたデジタルシステムの設計思想やデジタル文化の醸成、指標の構築と確認、イノベーティブな人材の採用、中間管理職の縮小などになったとしている。
著者は、時代やビジネス環境の変化に応じて、企業の組織形態を変化させ続けなければならないと主張する。デジタル企業は時代に合わせて組織形態をいち早く変化させ続けることのできる柔軟な企業で、デジタルをベースにした組織を設計し直し続けることが、経営者の仕事になるという。企業組織の変化の大きな潮流としては、軍隊式のピラミッド組織ではなく、変化につよいネットワーク型の組織に向かっていくとしている。
また新しい文化を醸成できるかどうかも、企業の明暗を分けると言う。透明性があり、情報を共有し合い、パートナーとして協力し合い、全員が継続的に勉強を続ける企業文化。こうした文化を醸成できるかどうかが、経営者にとって重要だという。
これこそがデジタル時代のリーダーのあり方。こうしたデジタルリーダーになるというやり方もアリかもしれないということではなく、こうしたリーダーになるしかない。それがこの記事の主張だ。
この記事を読んで、経営者は企業のトップというより、それぞれの部隊が自由に動けるように、組織、文化を整えるのが仕事になっていくのかもしれないと思った。
これが「Doデジタル」ではなく「Beデジタル」の真髄なのだろうな。