米ニューヨーク大学のScott Galloway教授は新刊「Post Corona」の中で、コロナ禍の混乱を受けてGoogle、Appleなどのテクノロジー大手が、大学などの教育ビジネスに乗り出すと予測している。有名大学と組んでカリキュラムを作ったり、独自にオンラインコースを作るという。テック大手が参入することで、高等教育は大きく変わることになるのだろうか。
Google、Apple、Facebook、Amazonなどのテック大手が教育産業を狙う理由の1つは、テック大手の株価上昇にある。コロナ禍で先が読めなくなった投資家が、より安全と見られるテック大手の株に集中している。株価上昇で潤沢な資金を得たテック大手は、より積極的な施策に打って出る。また株価上昇に値するような新たな収益源を探してくる必要があるわけだ。
同教授によると、新たな収益源になりそうな領域というと、技術革新で収益性改善の余地があり、市場規模が大きな業界ということになる。最有力候補が医療、教育で、医療は前回の記事でAmazonの取り組みを解説した。同教授によると、医療の次に、テック大手は大学などの高等教育市場を狙ってくるという。
テック大手の教育業界参入のシナリオとして可能性があるのが、有名大学と組んで新しいカリキュラムを作成することだという。
同教授によると、オンライン授業を中心に正規のカリキュラムの8割程度の内容を従来の半額の授業料で提供すると、世界中から受講希望者が集中し、相当の規模のビッグビジネスになる可能性があるという。
具体的例として、マサチューセッツ工科大学(MIT)とGoogleが組んで、科学、技術、工学、数学に特化した短期大学コースなどは人気が出るだろうとしている。ほかにも、イタリアのボッコーニ大学とApple、カーネギーメロン大学とAmazon、ワシントン大学とMicrosoftなどの組み合わせも、人気が出る可能性があるという。テック大手が参入することでオンライン授業周辺のテクノロジーが一気に進化する可能性がありそうだ。
またテック大手が自らオンラインコースを提供する可能性もあるという。テック大手のオンラインコースの修了証なら即戦力になりそうなので、普通の大学の卒業証書よりも就職に有利になるかもしれない。
Googleならコンピューターサイエンスのコース、Appleならアートに関するコース、Amazonならシステム運用に関するコースなどは人気が出そうだと同教授は指摘する。
実際にGoogleは2020年8月から、情報技術者養成コースをスタートさせている。同社のサイトによると、このほかにもデータサイエンティスト、UXデザイナー、プロジェクトマネジャーの養成コースを準備中だとしている。
アメリカの大学の授業料は高額なことで有名。コロナ禍が長引き、高額な大学でもオンライン授業しか受講できないのであれば、こうした新しいタイプのオンライン授業を受けてみようという人が増えるかもしれない。
同教授によると、テック大手は学生向けだけではなく、社会人向けのオンラインコースも手がけるはずだという。これからは社会が求めるスキルが次々と変化する時代になると言われる。生涯勉強を続けなければならないわけだ。同教授は、サブスクリプション型の生涯学習コースができるかもしれないとしている。