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AI新聞 -AI WEEKLY- 人工知能の世界をもっと身近に AI新聞 -AI WEEKLY- 人工知能の世界をもっと身近に

教育を変えるVRゴーグルのセンサーと自然言語処理の進化

  • 2020.11.16

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多くのベンチャー企業の栄枯盛衰を見てきて思うのは、ビジネスというのはタイミングがすべてだということだ。技術革新の波に乗り遅れるのは論外だが、ダメになるベンチャー企業の大半は、波がくる前に全力を出し切ってしまうように思う。波が来るまでは我慢していて、波が来たときに一気呵成に勝負を決める。これがベンチャー企業を成功させるコツではないだろうか。

 

現在の教育制度が、工業化時代に工場労働者を生み出すために設計されたものだという指摘をよく耳にする。新しい時代に合った教育のあり方とはどんなもので、それはいつ登場するのだろう。

 

どんなものかというのは比較的想像しやすい。現在の教育制度の問題点を克服した形になっていくのだと思う。現在の教育の問題の1つはは、画一的であるといういこと。何%かの生徒は退屈してしまい、何%かの生徒は落ちこばれてしまう。もう1つの問題は、大学の授業料が高すぎるということ。多くの若者が奨学金の返済に苦しんでいる。

 

これからの教育は、こうした問題を克服した形になっていくことだろう。つまり一人一人の進捗具合に合わせて教材が自由自在に変化するオンライン教育ということだ。

 

コロナでのリモート授業を経験して、やはりリアルに教室で授業を受けるほうがいいと主張する人がいる。それはそうだろう。ただ授業を見るのならオンラインよりも、教室でリアルに見るのがいいに決まっている。しかしだれ一人として落ちこぼれない、進捗具合に合わせて自由自在に変化する教材が、格安に提供されるというメリットが加わればどうだろう。オンライン教育のほうに圧倒的によくなる。

 

では技術革新の波に乗るタイミングはいつだろう。個人的には、VRゴーグルに各種センサーが搭載されるとき、AIの自然言語処理が急速に進化するときだと思う。

 

VRゴーグルの内側にカメラが設置され目の動きを観察できるようになれば、教材のどの部分を見ているのかが分かるようになるし、瞳孔の大きさで集中度が分かる。ある一定の心拍数になれば脳が活性化するという研究結果があるので、ゴーグルの顔に当たるゴムの部分に心拍センサーを埋め込み、勉強の前に簡単な足踏みなどの体操する教材が出てくるかもしれない。脳波センサーが搭載されて、集中度を計測できるようになるかもしれない。

 

米ヒューレット・パッカードが各種センサーを搭載したVRゴーグルの開発を始めたという話を耳にしたので、こうしたことが可能になる日はそう遠くないと思う。

 

一方、一人一人の進捗具合に合わせて自由自在に変化する教材にはAIが不可欠だ。今でもAI搭載を謳っている教材はある。理解している部分は飛ばして、間違った問題を繰り返し表示する、というようなものだ。選択問題の回答の順番を変えるなどの工夫はしてあるが、問題の文言には大きな変化がない。なので、一度やったことのある問題は、どうしても覚えてしまう。理解していなくても回答を覚えてしまっているので、勉強が身についていなくても先に進めるようになっている。

 

AIの自然言語処理が進化すれば、例えば二次方程式の解き方を理解するまで、数字や文言がまったく異なる問題をAIが永遠に自動生成するということが可能になる。

 

そして下の動画の中で取り上げたように、AIの自然言語処理はここ1、2年で急速に進化し始めた。今年登場して技術者に衝撃を与えたGPTー3のような技術が実用化されれば、一人一人に合った教材をその場で自動生成してくれるAIの登場もそう遠くないだろう。

 

VRゴーグルのセンサーと、自然言語処理AIという、教育の現状を根本から変える可能性を持った技術が手元に揃おうとしている。あとは、教育を変えたいという熱い思いを持ったベンチャーの登場を待つだけだ。

 

最後に、教室でのリアルな教育のほうがいいと思っている人のために、VRでピラミッドの中を探索するという教育プログラムを作った米国のベンチャーの動画を貼り付けておく。教育はリアルよりもVRのほうがいいに決まっているという良い例になってると思う。

 

 

 

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。