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リモートで希薄になったオフィスの人間関係をハードで補強=Sidekick社

  • 2020.12.30

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リモートワークの最大の問題は、同僚とのちょっとした会話ができないこと。同僚とのちょっとした会話は、精神衛生上もいいし、会話の中からイノベーションが生まれることだってある。リモートワークがニューノーマルになる中で、世界中のテック企業が同僚とのちょっとした会話を取り戻すためのソリューションの開発を急いでいる。

 

中でも注目株は、シリコンバレーのベンチャー企業Sidekick社。同社のソリューションは至ってシンプル。ビデオカンファレンス専用のデバイスだ。

 

「別に専用の端末とか用意しなくても、パソコン上でzoomを常時オンにしておけばいいだけでは」と思うかもしれない。しかし使い勝手を徹底的に追求した専用端末が、パソコンの汎用性をときに凌駕することがある。

 

どの程度、使い勝手がいいのか、イノベーションを生むようなちょっとした会話を取り戻せるのだろうか。実際に試してみないとなんとも言えないが、Sidekick社はいろいろと工夫を凝らしているようだ。

 

例えば、常に接続されているわけではなく、同僚と繋がるのは3時間だけ、というように設定できる。同社によると、繋がっている時間を3時間に限定することが最も生産性が上がるという。試行錯誤の結果、それが分かったという。もちろん最適な時間は業種、職務内容によって異なるだろう。

 

同僚と繋がっている間は、同僚の存在感を感じながらも、自分の仕事に集中できる。そして、ちょっと同僚の意見を聞きたいときは、画面をタップするだけで同僚に質問できるらしい。同僚の仕事をしている横顔から、同僚がどれくらい集中しているのか、話しかけていいタイミングかどうかが分かるのかもしれない。

 

またコーヒータイムの休憩を自動的にレコメンドしてくれる機能もある。休憩の間は、同僚と無駄話ができる。無駄話もまた、貴重な時間だ。

 

同僚と一緒にクロスワードパズルを楽しむという機能をある。何人かが集まって互いの顔を見ながら「さあ、何か話そう」と言われても、話せるものでもない。クロスワードパズルをしていると沈黙が苦痛にならないし、それほど集中力を必要としない簡単なゲームなので、何か思いついたときに「そういえば、あの取引先の案件だけどさ」とカジュアルに意見交換できるわけだ。

 

コロナ禍が終息しても、多くの会社は元の勤務体制に完全には戻らないと言われている。業態によってはリモートワークのほうが生産性が高いだろうし、特に若い世代には、リモートワークができるかどうかを就職の条件にする人も多いことだろう。完全なリモートワークでなくても、多くの企業は従来型の勤務体制とリモートの両方を取り入れたハイブリッド型の採用するのではなかろうか。

 

そうなるのであれば、この「ちょっとした会話ができる」ツールの市場は、それなりの規模になる。そして、もし特定のツールが広く普及すれば、そのツールはこれまでに入手できなかったようなデータを入手できるようになる。だれとだれが繋がっていて、どのような結果を生んでいるのか。だれが孤立しているのか。こうしたデータを基に、AIが最適な組織形態を提案できるようになるだろう。また表情から感情解析をして、メンタルヘルスの危機を察知できるようになるかもしれない。

 

これまでアナログだったことが、デジタルに置き換わる。その際には必ず新たなビジネスチャンスが発生するものだ。

 

 

 

 

 

 

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。