OpenAI、Microsoftと真っ向から競合する企業向けエージェントを発表

AI新聞

Workspace Agentsとは何か

Workspace Agentsは、OpenAIがこれまで提供してきた「カスタムGPTs」の進化形と位置づけられている。カスタムGPTsとは、特定の用途や業務に合わせてChatGPTをカスタマイズできる個人向けのツールで、2023年に導入されたが、企業の主要機能としては定着しなかった。それとの最大の違いは、個人向けのチャットボットではなく、チーム・組織単位で共有・運用することを前提に設計された点だ。

 

頭脳部分はOpenAIのコード特化モデルであるCodexで、クラウド上で稼働するため、ユーザーがオフラインの間も処理を継続できる。週次レポートの自動生成、ソフトウェア購買申請の審査、製品フィードバックの収集・優先順位付け、インバウンドリードの調査とCRM更新など、典型的なホワイトカラー業務を自律的にこなす。SlackやCRMシステムなど外部ツールとの連携も可能で、OpenAIの発表文によれば、OpenAI自身の営業チームがすでにリード精査の自動化にこのエージェントを活用しているという。

 

作成方法は簡単で、ChatGPTのサイドバーから「Agents」を選び、自然言語でワークフローを説明するだけ。ChatGPTがステップごとに構築を支援する。現在はChatGPT Business・Enterprise・Edu・Teachersプランでリサーチプレビューとして提供中で、2026年5月6日まで無料、その後有料化される予定だ。

 

蜜月の終わり——MicrosoftがAnthropicを選んだ日

Workspace Agentsが直接競合するのは、MicrosoftのCopilot Coworkだ。だが、この競合関係には重要な背景がある。MicrosoftはCopilot Coworkの「頭脳」に、長年のパートナーであるOpenAIではなく、AnthropicのClaudeを採用した。Word・Excel・TeamsといったM365のアプリと深く統合されたこの製品は、OpenAIにとって痛烈な一撃だ。

 

Workspace Agentsはその対抗措置と読むのが自然だ。ChatGPTというプラットフォームそのものを企業の業務ハブとして直接売り込む——MicrosoftのエコシステムをかわしてOpenAIが企業顧客に直接アクセスしようとする戦略だ。

 

亀裂の背景——契約とAGI定義をめぐる火種

OpenAIとMicrosoftは2019年以来、深く絡み合った関係にある。Microsoftはこれまで計130億ドル以上をOpenAIに投資し、現在OpenAIの約27%の株式を保有する。The Informationの報道によれば、OpenAIはChatGPTおよびAPIプラットフォームの収益の20%をMicrosoftに支払い続けている。この収益分配はAGI(汎用人工知能)の到達が独立専門家パネルによって認定されるまで継続する取り決めだ。

 

両社はAGI到達の基準として『AIシステムが年間1,000億ドルを超える利益を生み出す』という財務的指標を設けている、スイスの専門シンクタンクDigital Watch Observatoryと報告している。現在のOpenAIの年間売上高は約250億ドルで、利益はまだ赤字の段階。この定義上、AGI認定はまだ遠い先の話になる。

 

決定的な亀裂——AWSとの契約とMicrosoftの反発

関係が決定的に悪化したのが、2026年2月のAmazonとの大型契約だ。OpenAIはAWSをエンタープライズ向けプラットフォーム「Frontier」の独占的なサードパーティクラウドプロバイダーとする契約を締結。Amazonはその対価として総額500億ドルをOpenAIに投資することになっている。

 

Microsoftはこれを契約違反と見て、法的措置を検討しているとフィナンシャル・タイムズが報じている(2026年3月18日)。Microsoftの内部関係者は同紙に対し、「我々は契約を十分に精査している。契約違反があれば提訴する。AmazonとOpenAIが契約の抜け穴を探すつもりなら、勝つのは我々だ」と語っているという。2026年4月時点では訴訟には至らず交渉が続いているが、両社の関係が微妙な段階に入りつつあることは明らかだ。

 

20%の収益をMicrosoftに渡し続けながら、AWSと組み、Microsoftと競合する製品を次々と市場に投入する——OpenAIはパートナーシップの看板を掲げたまま、独立への道を着実に歩んでいる。

湯川鶴章

AI新聞編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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